金融とITの合成語「FinTech」に関して、米国で何が流行っているのか――。シリコンバレー支局に勤務する筆者の元に、そういう問い合わせが入ることが増えてきた。筆者が注目しているのは、スタートアップが手がける「融資」。そしてその実態は「サブプライムローン」だ。
FinTechスタートアップが手がける融資には、米国の大手金融機関JPモルガン・チェースのジェームズ・ダイモンCEO(最高経営責任者)も警戒を隠さない。ダイモンCEOが2015年4月に公開した「株主への手紙」は、「シリコンバレーがやって来る(Silicon Valley is Coming.)」という一節で日本でも知られる(関連記事:シリコンバレーがやって来る、全産業を襲う新たな脅威)。その中でダイモンCEOは、シリコンバレーのスタートアップが手がける融資サービスの水準が、既存の金融機関を上回ると率直に認めたのだ。
ダイモンCEOは株主への手紙の中で、「融資の審査にビッグデータを活用して消費者向けや中小企業向けに融資を行っているスタートアップ」が、既存の金融機関にとって脅威だと述べる。「既存の金融機関であれば数週間もかかる融資の審査を、スタートアップは数分で完了させている。スタートアップの方が『顧客の痛み』をうまく取り除いている」(ダイモンCEO)からだ。
様々なWebサービスから情報を入手して審査
ダイモンCEOが言う「融資の審査を数分で完了させるスタートアップ」の一つを紹介しよう。中小企業向け向けのローンを手がける米カベージ(Kabbage)だ。シリコンバレーではなく米ジョージア州アトランタに本拠を置くが、ソフトバンクやリクルートが出資したことで、日本でも同社に対する注目度が高まっている。
同社の中小企業向けローンは、顧客が同社のWebサイトで融資の申し込みをすると、平均わずか6分という短時間で融資の審査を完了する。そして翌日にはお金を顧客の銀行口座に振り込む。融資に関するすべてのプロセスがオンラインで完結する。
カベージがこれほどまでに短時間で融資の可否を判断できるのは、融資の審査をアルゴリズムだけに任せて、人間の関与を排除しているからだ。融資審査アルゴリズムは、顧客が利用する会計SaaS(ソフトウエア・アズ・ア・サービス)やクレジットカード決済サービス、電子商取引(EC)サイト、ソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)などからユーザーに関する情報を集めて、顧客の信用力を算出する。
カベージのロブ・フロウェイン(Rob Frohwein)CEOは、「インターネットを通じて入手できる様々な種類の情報を基に、その企業の返済能力やビジネスの継続性、経営者の性格などを審査して企業の信用力を算出している」と説明する(写真1)。