米サンフランシスコに拠点を置く米Wells Fargo (ウェルズ・ファーゴ)は、米国の銀行の中でも株式時価総額が最も大きい、いわば「全米最強の銀行」である。そんな同行がスタートアップ支援プログラム「Wells Fargo Startup Accelerator」を開始して1年半が経過した。

 同プログラムは、エンタープライズ(企業向け)テクノロジーのスタートアップに5万~50万ドルを出資し、スタートアップの顧客開拓などをWells Fargoが支援するというもの。これまでに9社のスタートアップを支援し、スタートアップが開発するのテクノロジーの効果をWells Fargoの行内で実証する「POC(Proof of Concept)」を行ったり、同行の顧客企業にスタートアップを紹介したりしてきた。

 同プログラムの責任者であるBipin Sahniシニア・バイス・プレジデント(写真1、2)は、「スタートアップ支援は、銀行の外で起こっているイノベーションを知るのに最適だ」と手応えを語る。Sahni氏に同行がスタートアップ支援をする目的や成果などを聞いた。

(聞き手は中田 敦=シリコンバレー支局)

そもそもWells Fargoがスタートアップ支援プログラム「Wells Fargo Startup Accelerator」を開始した理由は何でしょうか。

 スタートアップ支援プログラムは、投資部門ではなくR&D(研究開発)部門が推進している取り組みだ。R&D部門は、これからの銀行にとって欠かせない「顧客の利用体験(カスタマーエクスペリエンス)」、「顧客との関係性(カスタマーエンゲージメント)」を向上させるテクノロジーの開発、銀行の様々な機能を外部にサービスとして提供する「API(アプリケーション・プログラミング・インタフェース)」、「SDK(ソフトウエア開発キット)」などの開発に取り組んでいる。

写真1●米Wells FargoのBipin Sahniシニア・バイス・プレジデント
写真1●米Wells FargoのBipin Sahniシニア・バイス・プレジデント
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 カスタマーエクスペリエンスの向上や、外部の企業によるAPIの利用拡大などを進めるには、スタートアップとの連携が欠かせない。そう考えて始めたのが、スタートアップ支援プログラムである「Wells Fargo Startup Accelerator」だ。

 スタートアップを支援する目的は、大きく二つある。

 一つめは、我々が提供するAPIやSDKを利用するスタートアップの育成だ。実際にAPIやSDKを使ったスタートアップには、どうすればこれらがより使いやすくなるかアドバイスしてもらっている。APIやSDKの提供は当行にとって、新しいタイプの顧客を増やす上で非常に重要だ。

 二つめは、スタートアップを通じて銀行の外で起こっているイノベーションにアクセスすることだ。賢い人々が銀行の外で何をしているのかを知るのは、我々にとって非常に重要だ。そのためにはスタートアップ支援のような取り組みが最適だと考えた。

Wells FargoはどのようなAPIやSDKを提供しているのですか。

 Wells Fargoが提供する決済機能などをスマートフォン向けのeコマース(電子商取引)アプリケーションに組み込むためのAPIやSDKを提供している。