米General Electric(GE)が「エンタープライズITベンダー」として台頭している。ソフトウエア事業の売上高を2015年の50億ドル(約6000億円)から2020年には150億ドル(約1兆8000億円)にまで伸ばす。顧客に販売するのは自社の「IoT(Internet of Things)経験」だ。

 「GE自身がデジタル製造業(Digital Industrial Company)へと変化してきた経験を、社外提供(エクスターナライズ)する」。同社のJeff Immelt会長兼CEO(最高経営責任者)は2015年9月29日(米国時間)に米サンフランシスコで開催した自社イベント「Minds + Machines 2015」の基調講演で、聴衆にこう語りかけた(写真1)。

写真1●米GEのJeff Immelt会長兼CEO(最高経営責任者)
写真1●米GEのJeff Immelt会長兼CEO(最高経営責任者)
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 GEは近年、IoTに関する取り組みを社内で積極的に続けてきた。例えばGE社内の製造拠点では、様々な製造設備に取り付けたセンサーから集めたデータを元に、製造設備が近い将来に故障するかどうかを予測している。

 具体的には、それぞれの製造設備について「Digital Twin(デジタルの双子)」と呼ぶシミュレーション用のモデルを用意。実際の製造設備で発生しているデータをモデルに入力してシミュレーションを実行し、故障の発生時期や場所を予測する。予測に基づいてあらかじめ修繕を行うことによって、計画に無い操業停止を10~20%削減してきたという。

 GEはIoTとシミュレーションを組み合わせたDigital Twinの取り組みを、IT業界で流行する「Software Defined(ソフトウエア定義)」の手法になぞらえて「ソフトウエア定義のデジタル製造業を実現する手法」と表現する。GEはこの手法を、風力発電事業や鉄道設備の保守事業などにも適用しているという。

IoTの世界の「Apple」や「Google」を目指す

 GEが販売するのは、GEが様々な産業領域で“デジタル製造業”を実現するために自社で開発してきた「アプリケーション(アプリ)」と、そのアプリケーションを稼働するための「プラットフォーム」のクラウドサービスである「Predix.io」だ。

 Predix.ioでは、GEが開発したデジタル製造業を実現するアプリだけでなく、他社(サードパーティー)が開発したアプリも利用できる(写真2)。米Appleや米Googleが、スマートフォンやタブレット向けのアプリを「アプリストア」で販売しているように、GEもPredix.ioというプラットフォームで利用できるアプリを「GE Store」で販売する。

写真2●石油・ガス産業向けにGEが販売する「アプリ」の一覧
写真2●石油・ガス産業向けにGEが販売する「アプリ」の一覧
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 Minds + Machines 2015の基調講演でImmelt会長は、「我々はデジタル製造業を実現するOS(オペレーティングシステム)を提供する」「アプリのマーケットプレイスを提供する」などと語り、同社がIoTの世界において、スマホやタブレットの世界におけるAppleやGoogleのような「プラットフォーマー(プラットフォーム提供事業者)」を目指す意向であることを明言した。