ここ数年、Internet of Things(IoT)への注目を背景に、ハードウエア関連のスタートアップを育成しようとする「ハードウエアアクセラレーター」が盛んに誕生した。ところがそんな中、半導体大手の米Qualcommが地元サンディエゴで開設したロボットのアクセラレーターがひっそり幕を閉じていた。

 Qualcommは2014年に「Qualcomm Robotics Accelerator」の設立を発表し、世界のロボット起業家たちに取り組みをアピール。最終的にアメリカ、イタリア、シンガポールなど世界中から10社のスタートアップが選ばれて、Qualcomm本社キャンパス内のスペースを利用して製品開発に励んでいた(写真1)。

写真1●「Qualcomm Robotics Accelerator」のオフィス
写真1●「Qualcomm Robotics Accelerator」のオフィス
撮影:瀧口 範子
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 2015年9月には、その10社のデモが投資関係者やプレス関係者を集めて開かれた(写真2)。筆者は「ロボットビジネスもこうやって育成されて羽ばたく環境が整ったのか」と期待していたものだ。

写真2●2015年9月に開催された「Qualcomm Robotics Accelerator」のデモイベント
写真2●2015年9月に開催された「Qualcomm Robotics Accelerator」のデモイベント
撮影:中田 敦
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 Qualcommは毎年10社のスタートアップを選抜して育成し、世の中へ輩出していく事業を、少なくとも3年間は継続する計画だった。しかし第1期生らのデモデーから間もなく、2015年の末にアクセラレーター自体を閉鎖してしまった。オープンは派手だったが、閉鎖のニュースは目立たなかった。

 閉鎖の理由は、アクセラレーターのコストをQualcommが負担できなくなったことである。スマートフォンの成長が鈍化するに従って、Qualcomm本体の業績が伸び悩み、同社は2015年から2016年初めにかけて戦略転換のためにレイオフを行っている。戦略の見直しの中で、ロボットのアクセラレーターは早くもカット対象になってしまったのだ。

 このロボティクスアクセラレーターは、大企業が社内で運営するアクセラレーターとしても関心が持たれていた。