写真1●米Toyota Research Institute(TRI)のGill Pratt CEO(最高経営責任者)
写真1●米Toyota Research Institute(TRI)のGill Pratt CEO(最高経営責任者)
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 トヨタ自動車の人工知能研究子会社、米Toyota Research Institute(TRI)のGill Pratt CEO(最高経営責任者)は2016年4月7日(米国時間)、米サンノゼで開催中の「GTC 2016」で基調講演を行い、自動運転技術の開発の方向性や、TRIが米国3カ所目の人工知能研究拠点をデトロイトに近いミシガン州アナーバーに開設することなどを明らかにした(写真1)。

 米NVIDIAのイベントである「GTC(GPU Technology Conference)」は、元々のテーマはGPU(グラフィックス・プロセッシング・ユニット)だが、近年GPUがディープラーニング(深層学習)の処理に欠かせない存在になっていることから、GTC 2016はAI(人工知能)のイベントと化している。

 TRIのPratt CEOは、自動運転には二つの方向性があると指摘した(写真2)。一つは運転手(Chauffer)モデルで、自動車の運転はAIが全てを担当する。もう一つは守護天使(Guardian Angel)モデルで、自動車の運転は基本的に人間が担当し、危険などが生じた場合にAIが人間をサポートする。

写真2●運転手モデルと守護天使モデルの違い
写真2●運転手モデルと守護天使モデルの違い
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 各社のスタンスで言えば、ハンドルの無い自動運転車を公表した米Googleや「今後は交通サービス市場で勝負する」と明言する米Ford、米Lyftとタクシーサービスの共同開発を始めた米General Motors(GM)などは、運転手モデルを目指している。一方のトヨタは従来、守護天使モデルには積極的だったが、運転手モデルには距離を置いていたのが実情だった。

 TRIのPratt CEOは今回、TRIの自動運転のゴールが守護天使モデルと運転手モデルの両方であることを明言(写真3)。Pratt CEOはトヨタの豊田章男社長から与えられたミッションが「安全性、環境、すべての人へのモビリティ(Mobility for All)、Fun to Drive」の四つであることを示し、守護天使モデルが「安全性」と「Fun to Drive」のための施策であり、運転手モデルが運転のできない人たちに移動手段を提供する「Mobility for All」のための施策であることを解説した。

写真3●TRIが目指す自動運転のゴール
写真3●TRIが目指す自動運転のゴール
自動運転車以外に、屋内での移動手段の研究も進める
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