ロースクール(法科大学院)に通う法律家の卵は、将来どんな職業に就くだろうか。日本の場合、予測は単純だ。弁護士、判事、検事のいずれかだ。しかしシリコンバレーにあるスタンフォード大学では、事情がちょっと異なる。少なからぬ「卵」たちが、テクノロジースタートアップの起業を目指しているのだ。

 実際にスタンフォード大学ロースクールには、法律家の卵がテクノロジー起業のアイデアを練るための場が用意されている。法律分野におけるテクノロジー主導のイノベーションを目指す「CodeX」という研究機関がそれだ。

 CodeXが研究するのは、ビッグデータ解析や機械学習などを活用して法律業務を効率化したり、法律に関するさまざまなデータを可視化したりする技術だ。そしてCodeXで学んだロースクールの学生達は、在学中の研究成果を基にした起業を目指す。その一例が米Ravel Lawだ(関連記事:リーガルインフォマティクスで法律業務を革新、スタンフォード大出身の米Ravel Law)。

 同社を起業したDaniel Lewis CEO(最高経営責任者)兼共同創業者は、CodeXの研究プロジェクトとして「判例と判例の関係性を可視化(ビジュアル表示)できる検索エンジン」のプロトタイプを開発。それを元にRavle Lawを起業した。

 もっともLewis氏自身はロースクールで学ぶ法律家であってソフトウエアエンジニアではないので、実際の開発作業はコンピュータサイエンス学科からCodeXの研究プロジェクトに参加していた学生が担った。CodeXは、法律家の卵とソフトウエアエンジニアの卵、さらには「デザイン思考」を学ぶデザイナーの卵を出会わせる場としても機能している。

写真●スタンフォード大学ロースクールで開かれたミートアップの模様
写真●スタンフォード大学ロースクールで開かれたミートアップの模様
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 法律家の卵によるテクノロジー起業を後押しする取り組みも行われている。記者は2016年1月12日の夜、CodeXが主催する「Building the Legal Startup」というイベントに参加した(写真)。ロースクールで学ぶ学生などに対して、実際に法律分野のテクノロジーリーガルスタートアップを起業した先輩や、シリコンバレーにあるベンチャーキャピタルのパートナー(重役)などが、「リーガルスタートアップを成功させる方法」を解説するという催しだ。