米NVIDIAのJen-Hsun Huang創業者兼CEO(最高経営責任者)は2017年1月4日(米国時間)、「CES 2017」の基調講演を行い(写真1)、同社の自動運転用AI(人工知能)プラットフォーム「NVIDIA DRIVE PX 2」を自動車メーカーの独Audi、自動車部品メーカー大手の独ZFと独Boschが採用すると発表した。AudiとNVIDIAは2020年までに「レベル4」の自動運転を実現するとした。

写真1●「DRIVE PX 2」を手に講演する米NVIDIAのJen-Hsun Huang創業者兼CEO(最高経営責任者)
写真1●「DRIVE PX 2」を手に講演する米NVIDIAのJen-Hsun Huang創業者兼CEO(最高経営責任者)
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 NVIDIAが車載スーパーコンピュータと呼ぶDRIVE PX 2の採用は、2016年の段階でスウェーデンのVolvo Cars、米Tesla Motors、中国Baiduが発表済み。今回、大手自動車部品メーカーであるZFとBoschがDRIVE PX 2の採用を発表することで、より多くの自動車メーカーにDRIVE PX 2が広まる可能性が高まった。

 米Intelも同日に、「Atom」「Xeon」プロセッサやFPGAで構成する自動運転プラットフォームを「Intel Go」と名付け、独BMW GroupとイスラエルMobileyeの3社で自動運転車の公道テストを2017年後半に開始すると発表した。米Qualcommが2016年10月に買収すると発表したオランダNXP Semiconductorsも自動運転プラットフォームを持っている。NXPは2016年5月に自動運転用車載コンピュータ「BlueBox」を発表し、2020年までにレベル4の自動運転を実現するとしている。

 パソコンやスマートフォンのプラットフォームを供給してきた大手半導体メーカーが、今度は自動運転プラットフォームを開発し、パソコン/スマホメーカーに代わって自動車メーカーや部品メーカーを自社陣営に引き込もうとする構図が明確になった()。

表●自動運転プラットフォームを巡る動き
自動運転プラットフォームNVIDIA DRIVE PX 2Intel GoBlueBox
半導体メーカー米NVIDIA米Intel蘭NXP Semiconductors(米Qualcommが買収を発表済み)
自動車メーカー独Audi、中国Baidu、米Tesla Motors、スウェーデンVolvo Cars独BMW Group
部品メーカー独Bosch、独ZFイスラエルMobileye

マイナス30℃~80℃の環境で稼働可能

 自動車部品メーカーのZFはNVIDIAのDRIVE PX 2をベースに、自動運転用の車載コンピュータ「ZF ProAI」を2018年までに製品化する。ZF ProAIは摂氏マイナス30度から80度までの環境で稼働が可能。同社のStefan Sommer CEOはCES 2017に伴う記者会見で、「ZF ProAIは自動車だけでなく、トラックやフォークリフトの自動運転を実現するものになる」と語った(写真2)。

写真2●「ZF ProAI」を発表する独ZFのStefan Sommer CEO(左)
写真2●「ZF ProAI」を発表する独ZFのStefan Sommer CEO(左)
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 自動車部品メーカーの取り込みは、NVIDIAの陣営作りにとって大きな意味を持つ。「センサーやアクチュエーターを自動運転システムと統合するのは、ZFのような自動車部品メーカーの協力が無ければ不可能」(NVIDIAのRob Csongor氏)だからだ。ZFやBoschとの提携は、NVIDIAにとって大きな一歩になりそうだ。