量より速さ

 今まで、私は“女性起業家”だということを自分から強調したことはなかったと思います。でもこれだけは言わなければなりません。

 女子よ、急げ! あなたは男子の5年早く走らなければ間に合わない!!

 幸いなことに私は、女性であることが仕事の邪魔になったことはまったくありませんでした。仮にあったとしても覚えてないのだからその程度なのでしょう。実家の両親は、「女子は男子の3倍の量働かなければ、同等に評価されない。頑張れ」と物心ついたころから私に説いていました。でも、(業種とステージにもよるでしょうが)私の入ったゲーム業界は実力主義で、女であるからと言って過小評価を受けたことはなかったように思います。

 ですから、女子が頑張らなければならないのは「3倍の量」ではなくて、「3倍の速さ」です。仕事の評価は男女平等、でも「出産」は違う。女子だけが出産というタイムリミットを持っている。出産したいかどうか決めていなくても、「するかも」という選択肢を残すためには、女子はある程度の「逆算」を人生計画に求められます。

 例えば、出産にまつわる色々なリスクが上がるといわれる35歳までに出産するとなると、34歳までに妊娠、33歳で結婚…するしないにかかわらずパートナーを決定(結婚自体は社会制度なので年齢制限はないと思います)、パートナーを見極めるのに2年かかるとして交際を始めるデッドラインが31歳、相手を探すためにどの国や地域に定住するか決めておくのが30歳。つまり、30歳までにキャリアを固めなければ海外勤務か出産のどちらかを諦める…。これが新卒時代の小島による「逆算人生計画」です。

 この計画を尊敬する取引先の方に説明したところ(おいおい)、「逆算で生きている人間と一緒に仕事したくないな」と言われてしまった苦い記憶があります。きっと彼には、私が仕事をおろそかにしているように感じられ、仕事相手として頼りなく見えたのでしょう。私だって、プロジェクトが修羅場の中、取引先から妊活プランを聞かされたら、「この子の仕事大丈夫かな」と思うでしょう。