日本の電子部品産業にとって、信頼性に関わる技術は、高度な開発力とともに、国際競争力の中核を担っています。さらに、セットメーカーの製造や開発等の外部委託の加速もともなって、電子部品メーカー自身で信頼性技術の強化を図ることの重要性は益々高まっています。

 このような状況に鑑み、部品業界では、電子部品の信頼性技術をより強化することを目的として、2014年に電子部品部会傘下の技術・標準戦略委員会 部品安全専門委員会内に「信頼性技術強化WG」を立ち上げ、関連する課題の解決につながる活動を進めています。

 ここでは、製品の信頼性確保手法の一つであるFMEAの概要と、本WG活動の成果物として2016年9月に発行した、電子部品のための“FMEA実施ガイド”について紹介します。

製品の信頼性を確保するFMEA

 FMEA(Failure Mode and Effect Analysis:故障モード・影響解析)は、製品の信頼性を確保する手法の一つであり、問題の再発防止ではなく、予測に基づく未然防止のために行うものです。

 FMEAは、1950年代に米国の航空機メーカーであるGrumman Aircraft社がジェット戦闘機の操縦システムの信頼性を確保するために使用したのが始まりと言われています。1960年代になって、米航空宇宙局(NASA)による人類初の月面着陸を行ったアポロ計画に展開されることにより、この手法の知名度は高まりました。

 「未知なる月に人間を送りかつ安全に地球に帰還させなければならない」「費用のかかるロケットを使った試験ができない」、さらに「過去の経験に基づく信頼性評価も難しい」といった状況下で採用されたものであることに思いをはせてみると、このFMEAという予測に基づく信頼性確保の手法について、おぼろげにでもイメージができるのではないかと思います。

 現在、FMEAはIECの国際規格(IEC 60812:2006)になっており、国内においてもJIS C 5750-4-3:2011として規格化されています。また、自動車産業向けの品質マネジメントシステムの技術仕様であるIATF 16949:2016においては、コアツールの一つとしてサプライヤーへの要求事項となっています。

FEMAの目的と種類

 FMEAを実施する目的を表1に示します。

表1 FEMAの目的
(1)潜在的な設計・製造上の問題点の摘出とその改善発生しそうな問題点を予測し、それが発生しないようなプロセスにする。
(2)重点指向による問題解決リスクが高いと判断された故障モードに着目して、優先的に改善を行う。
(3)情報共有FMEAを作成する段階で、設計・製造・品質管理・営業などいろいろな人が加わることによって、設計思想・評価・管理のポイントなどを共有できる。
(4)固有技術の統合個々の技術者が持っている過去の経験やノウハウを、FMEA作成時に盛り込むことによって統合できる。
(5)技術の伝承完成したFMEAは、貴重な知的財産になる。
(6)継続的な改善改善後の見直し、又は定期的な見直しを繰り返すことによって、継続的に改善を進められる。

 FMEAは、製品の構想や設計、工程の設計、設備の設計など多くの段階で作成することができますが、主なものとして設計FMEAと工程FMEAが挙げられます。

【設計FMEA】

・製品の欠陥による機能損失、安全上の障害発生などを防止するために製品の設計段階で行われる。
・製品の故障モードを挙げ、これらの故障モードによって引き起こされる機能損失、事故、障害を予測して摘出する。さらにこれらの故障モードに対して、発生した場合の影響の大きさ、故障が発生する確率、故障が検出される確率を評価・ランク付けして重大な故障を防止する。

【工程FMEA】

・製品の製造工程の問題を明確にするもので、製造工程に起因する故障モードを追究し、工程の改善を行うために用いられる。
・故障モードの追究は、製品を製造するための工程要素(人、材料、設備、方法、環境など)に向けられる。