「2017年度版実装技術ロードマップ」を3回にわたって紹介する連載。最終回の今回は、電子部品、プリント配線板、実装設備の将来像を展望する上でのキーポイントを解説する。

電子部品の将来、センサー市場が急拡大

 IoT時代に向けて、センサーの用途は拡大している。センサーに求められる技術的、品質的な要求は幅広く、かつ高度になっている。特に、自動運転の実現において車載用センサーは非常に重要なキーパーツであり、センサーフュージョンによって、より高度な役割を果たすようになる。

 図1に車載用慣性力センサー(Z軸Gyro+3軸加速度センサー)の事例を示す。

図1 車載用慣性力センサー(Comboセンサー)の開封写真
図1 車載用慣性力センサー(Comboセンサー)の開封写真

 自動車の横滑り防止装置などでは、車両に分散配置されていた制御用電子回路と制御メーターがモジュールとして一体化される「機電一体」がトレンドになっている。これらを背景として近年、「Comboセンサー」と呼ばれる複合センサーの採用が進んでいる。ComboはCombinationの略である。機能が異なるセンサーを融合するための実装技術の重要性が高まっている。

 2017年度版のロードマップでは、注目度の高いバイオセンサーを取り上げている。バイオセンサーは、バイオ分子によって標的物質を認識する基質認識部分と、バイオ分子が標的物質を認識したことを読み取って電気信号に変換する信号変換部分から成る。標的物質の認識(結合や化学反応)に基質特異性の高いバイオ分子を用いることによって、低濃度の標的物質を直接検出できる。標的物質は様々な化学物質や生物、生物由来物質である。信号変換部分は、いわゆる電子デバイスである。ISFET(Ion Sensitive Field Effect Transistor)や各種MEMSセンサーなどの利用が試みられている。図2に事例として、ISFETを用いたバイオセンサーの動作原理の概略図を示す。

図2 バイオセンサーの動作原理(ISFETを用いた事例)
図2 バイオセンサーの動作原理(ISFETを用いた事例)
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 FETのチャネル表面に抗体(プローブ分子)が付いた感応膜を配置する。そこに検体液を入れた際、検体液中に標的物質があった場合にそれが抗体に捕らえられ、電気的な状態が変化し、それを検出する。

 バイオセンサーでは、従来からの電子デバイスとは異なる、以下のような課題がある。

(1)実装課題
  • バイオセンサーでは基質認識部 (バイオ分子:タンパク質、脂質、糖質、核酸などが構成物質) として生物組織や生物由来の物質を使用する。従来の電子デバイスとは全く異なる物質の実装が必要である。
  • ほとんどのバイオ分子は耐熱性が低く、ウエット環境でのみ機能を発現する。また、保存安定性に乏しく、動作範囲が生体環境範囲 (温度、pH、塩分濃度など) に限定される。さらに、使用前に特殊な処理が必要となる。このように多くの制約がある。
(2)ビジネス課題
  • センサー素子やバイオ分子の生産、実装、検査、出荷などの全てを垂直統合で取り組めば良いが、例えばバイオ分子を外部調達する場合、その受入検査や出荷後の品質保証など、難易度の高い企業間調整が必要になる(図3)。
図3 バイオセンサーの製造に必要な商流(想定)
図3 バイオセンサーの製造に必要な商流(想定)
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 図3では、バイオセンサーの製造にあたって新たに必要となる要素を赤文字で記載した。

 バイオセンサーを実用化するために乗り越えなければならないハードルは高い。しかし、これをチャンスとして捕らえれば、新たなビジネス創出につながると考える。