皆さん、2015年末にストレスチェックが義務化されたこと、そして2016年6月に化学物質管理が強化されることをご存じでしょうか。製造業に関わる企業などに勤務する方々にとって、いずれも重要な話題です。

 近年の高度化する環境のもとで、精神障害に関する報告などは政府広報でも増加傾向にあります。過重労働に端を発する自殺の報道や、精神障害関係の労災が増加傾向にあるとの報告もされているところです。多くの企業ではメンタルヘルスケアに真剣に取り組んでいますが、取り組みが遅れる企業もあり、わが国ではメンタルヘルス対策を総合的に促進することが社会的な課題であると考えられています。

 それと同時に、企業にとっては化学物質の管理についての重要性が一層高まっています。化学物質の管理は、専門性の高さや物質による多種多様性から取扱管理の難しいものではありますが、事業場の安全対策を徹底する上で、その危険性への理解や取扱方法を正確かつ慎重に進めることは必須事項です。指導や周知、しっかりした管理は安全の要であります。

 日本では、2014年6月25日に労働安全衛生法が改正され、以下に示す7つの項目が施行(一部予定)されています。

 

【労働安全衛生法の改正項目】

(1)化学物質のリスクアセスメントの実施 2016年6月1日施行予定
一定の危険性・有害性が確認されている化学物質による危険性または有害性等の調査(リスクアセスメント)の実施を事業者の義務とする。
(2)ストレスチェックおよび面接指導の実施 2015年12月1日施行
(3)受動喫煙防止措置の努力義務 2015年6月1日施行
(4)重大な労働災害を繰り返す企業への対応 2015年6月1日施行
(5)外国に立地する検査機関の登録 2015年6月1日施行
(6)第88条第1項に基づく届出の廃止 2014年12月1日施行
(7)電動ファン付き呼吸用保護具の型式検定 2014年12月1日施行

 電子情報技術産業協会(JEITA)産業安全委員会では、電子業界における産業安全に関する課題に対応してきました。企業の健全な発展のため、会員企業間での安全対策の普及活動、安全対策活動に関する意見交換、産業安全に関わる法規制動向に関する情報発信などの活動を通じ、会員企業および業界全体の災害の撲滅と安全意識のさらなる向上を果たすことを目的に活動しています。

 このたびの労働安全衛生法の改正においては、「ストレスチェックの義務化」と「化学物質管理の強化への対応 」について、当初から新しい情報を得るとともに意見交換などを行ってきました。製造業にとって極めて重要であり、かつ責任ある対応が必要で、そして課題への深い理解が求められるからです。

 本記事では7項目のうち、多くの事業場が関係する「ストレスチェック制度」(2015年12月1日施行)と、取り組みが複雑な化学物質管理の強化(2016年6月1日から施行)について、厚生労働省の提供情報を基に紹介します。決して他人事ではありませんので、対応が必要な事業場の関係者のみならず、製造業に関わる方々はぜひ本記事を最後まで読んでいただき、その内容をご理解ください。

 

【主な改正労働安全衛生法のポイント】(厚生労働省HPより抜粋、http://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/0000049191.htmlを参照)

1.ストレスチェック制度の創設

・ 医師、保健師などによるストレスチェックの実施を事業者に義務付ける。
(ただし、従業員 50 人未満の事業場については当分の間努力義務とする)
・事業者は、ストレスチェックの結果を通知された労働者の希望に応じて医師による面接指導を実施し、その結果、医師の意見を聴いた上で、必要な場合には、適切な就業上の措置を講じなければならないこととする。

2.化学物質管理のあり方の見直し

特別規則の対象にされていない化学物質のうち、一定のリスクがあるものなど について、事業者にリスクアセスメントを義務付ける。