役員の半数が自らMT(手動変速機)車で運転を楽しむ自動車メーカーが、マツダだ。機械を人が操ることにこだわる同社だが、自動運転車の開発を怠っているわけではない。MTと自動運転という正反対の性格のクルマをつなぐべく、東京大学と共同で、ある研究開発を進めている。

 マツダが東京大学と共同研究しているのが、「音声病態分析学」のクルマへの応用である。音声病態分析学とは、人間の音声に秘められた感情や健康状態を判断するものだ。人間が発する音声には言葉や音の高さだけでなく、その震え方などに感情や気分などが込められている。

図1 音声病態分析学による感情分析
図1 音声病態分析学による感情分析
音声病態分析学による感情の分類。音声から10の感情に分類し、さらにストレスや身体の疲労度、精神状態を解析することにより、心臓や脳の疾患の予兆、心の病などを判断できるという。
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 声帯の動きは、運動神経と副交感神経の2系統で制御している。このため、思っていることや感じていることと正反対の言葉を発することが可能になる。だから、音声を分析すると、本当の状態を知ることが可能なのだ(図1)。

 これを発見したのは、東京大学大学院医学系研究科で特任講師を務める光吉俊二氏である。喜怒哀楽の「喜」「怒」「哀」の部分で“快活度”を判断し、「楽」は平穏と興奮の度合いから“くつろぎ度”を測る。快活度とくつろぎ度の両要素を合わせた“元気度”の高さによって、心身の健康度合が分かるそうだ。さらには、脳や心疾患の予兆にさえも応用できるという。