奈良県橿原市にあるジェイテクト奈良工場。電動パワーステアリング(EPS)世界トップシェアの同社のマザー工場でもある。世界に先駆けて実用化したコラムアシスト式EPSを始め、ラックアシスト式EPS、電動油圧EPSの電動油圧ポンプを生産しているほか、生産が縮小傾向にある油圧式パワーステアリングの大型車用をここに集約して生産を続けているという。

 「既存の工場の敷地面積のまま、約10年間で生産量をおよそ4倍に引き上げ、EPSの需要増に対応しています」。

コラムアシストEPSの構成部品とそれを組み立てる過程を並べたもの。減速機の内部以外は別工場や外注が生産したものだが、ここで加工、組み立てして完成品となる。
コラムアシストEPSの構成部品とそれを組み立てる過程を並べたもの。減速機の内部以外は別工場や外注が生産したものだが、ここで加工、組み立てして完成品となる。
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 工場長の川野昭彦氏はさらりと説明を続けるが、それが10年前にもすでに十分生産効率を追求した工場なのだから、ちょっとモノづくりの現場を知った者なら、それがいかに常識外れな数字であることが分かる。すでに個々の生産工程はスピードアップなどできる余地などなかったはずだ。

 しかも年々高まる自動車メーカーからの技術的要求をクリアした上での増産だ。これは目標ではなく、すでに達成された実績なのである。いったいどんな秘訣があるのだろう。聞けば聞くほど不思議で面白い、斬新でユニークな生産方法を導入した工場の取材はここから始まった。

減速機の部品加工、組み立てまでを行なうサブAssyライン。からくりを駆使して、ワークの着脱を自動化することで作業者の負担を減らし、事故も防いでいる。
減速機の部品加工、組み立てまでを行なうサブAssyライン。からくりを駆使して、ワークの着脱を自動化することで作業者の負担を減らし、事故も防いでいる。
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 ジェイテクト奈良工場の月産台数はコラムアシスト、ピニオンアシストのEPS合計でおよそ60万台。それだけではなく、前述のように油圧パアステや電動油圧ポンプを生産するため敷地内には五つの工場建屋があり、さらにステアリング事業本部として研究開発センターがある。同社のステアリング事業の中核とも言える拠点だ。