前回のコラムでは「開発力調査」の結果から、製品開発の現場において高い品質、機能を保持しながら、利益確保のために目標コスト達成努力をしていること、日本企業がこれまであまり手をつけることができていなかったマーケティング領域に力を入れ始めていることをお伝えしました(前回のコラムはこちら)。また、開発現場は相変わらずリソースの不足にあえぎ、開発期間の遅延も多発している状況であることもお伝えしました。

 今回のコラムでは調査から明らかとなった開発現場の現状を踏まえ、日本の製造業がどのような道を進むべきかについて「どうすれば目標コストを達成できるのか」に着目してお話します。

コスト達成度向上のためのキーポイントとは?

 かつては日本製造業の強みである高機能・高品質な製品を市場に出すことができれば利益が出ていた企業も、昨今の韓国、中国企業をはじめとした新興国企業の追い上げにより、利益を出しにくい状態に陥った結果、コストを最重要課題として当社に相談をいただくケースが少なくありません。ここでは今まで機能・品質に比べて置き去りにされがちであったコストに着目し、目標コスト達成度が上位と下位のプロジェクトそれぞれの開発力調査データを比較分析することによって、コスト達成度を向上させるためのキーポイントが何かを洗い出していきます。

 図1に目標コスト達成度の上位5%と下位5%のプロジェクトを抽出し、その抽出されたプロジェクトについて、自社の3つの競争力(「マーケティング力」「開発力」「生産技術力」)が、業界標準や競合他社と比較して高いと感じている割合を取り出し、上位5%のプロジェクトと下位5%のプロジェクトの各平均値の差を集計したグラフを示します。グラフの数値が大きいほど目標コストを達成できたプロジェクトにおいて重要な競争力であることを示しています。

図1 目標コスト達成度上位と下位のプロジェクトにおける競争力の差
図1 目標コスト達成度上位と下位のプロジェクトにおける競争力の差
 図1からは「生産技術力」に比べ、「マーケティング力」「開発力」の2つの競争力が目標コスト達成度との相関が強いことが見て取れます。これはモノの製造に着手する前の要素である「マーケティング力」と「開発力」が目標コスト達成度の支配的要因であることを表しています。