松岡技術研究所代表取締役の松岡甫篁氏
松岡技術研究所代表取締役の松岡甫篁氏
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 切削分野で技術進化が加速している。部品の高精密・微細切削のニーズや、難削材の精密切削のニーズがその技術進化を後押ししている。「技術者塾」において「高付加価値を実現する 超精密・微細切削」〔2016年2月12日(金)〕の講座を持つ、松岡技術研究所 代表取締役の松岡甫篁氏に、超精密・微細・難削材の切削を学ぶ理由やポイントについて聞いた。(聞き手は近岡 裕)

──超精密・微細・難削材の切削は今、なぜ求められているのでしょうか。

松岡氏:携帯電話分野のスマートフォンから始まったスマート化が、自動車分野を含むさまざまな工業製品に広がっています。こうしたスマート化に伴い、より精密・微細な部品の適用が増加。さらに、その精密化、微細化のニーズは留まることを知らず、これらの切削加工に使う微小径エンドミルの特性向上、および微小径化の動きが加速しています。スマート化の中核はエレクトロニクス分野ですが、それ以外に医療分野にも超精密・微細切削技術の適用は広がっています。

 一方、被削材に関しては多様化が進んでおり、高硬度鋼や超硬合金の切削ニーズが高まっています。現在、有望視されている航空機分野では、チタン合金や炭素繊維強化プラスチック(CFRP)といった難削材を効率良く切削することはもちろん、工具摩耗に関する耐久性が求められています。

 「技術者塾」の講座では、こうした技術進化が激しい切削技術について、基礎から実用レベルまでを収得することで新たな分野に進出したり、生産技術を高めたりする重要なヒントになるものと考えます。

──超精密・微細・難削材の切削は、今後ますます必要とされるようになるのでしょうか。

松岡氏:先の通り、スマートフォンから始まったスマート化は自動車など多くの工業製品に拡大しつつあり、かつ世界的な傾向となっています。多くの工業製品の生産が日本国内から海外へ移転している中、精密・微細切削技術は今のところ、日本の強みとして認識されており、今後の急速な市場拡大が期待されています。

 一方で、航空機分野の受注を拡大する上で、難削材の切削技術の高度化は不可欠な生産技術として期待が高まっています。ここでは高品質化とともにコスト削減も求められています。

──超精密・微細・難削材の切削を学ぶ上でのキーポイントは何ですか。

松岡氏:超精密・微細・難削材の切削を実践する上で習得すべき内容としては、以下の項目が挙げられます。
[1]エンドミルの切れ刃形状と工具特性、工具摩耗、切削面精度と切削条件の関係といった基礎知識
[2]エンドミルの微小径化と超精密切削向けの開発動向と具体例の紹介
[3]精密、微細切削におけるマシニングセンタの選択条件
[4]超精密・微細切削事例の紹介
[5]難削材切削のポイントと適用工具の条件、切削事例

──「技術者塾」の講座では、どのようなポイントに力点を置いて解説するのですか。

松岡氏:本講座では、高速ミーリングの基礎理論を解説します。高速ミーリングは難削材の切削、および超精密・微細切削を理解する上で基礎となる切削法です。例えば、高硬度鋼をはじめ、医療機器や航空宇宙分野でよく使われるチタン合金やニッケル基合金の「インコネル」や「ハステロイ」、そしてステンレス鋼などで、高品位な切削面を得るには高速ミーリングの考え方が基本となります。

 加えて、超精密・微細切削における適用工具やマシニングセンタ、切削技術などに関して、具体的な事例を交えながら解説することで、理解を深める内容に仕上げています。

──想定する受講者はどのような方ですか。また、受講することでどのようなスキルを得られますか。

松岡氏:精密・微細切削と難削材切削に関心がある技術者はもちろん、新たな分野へ進出しようと考えている企業経営者や経営幹部、開発者、生産技術マネージャーにも役立つと思います。

 受講効果としては、まず、生産技術の高付加価値化に必須となる最新の切削技術について基礎理論から学べます。加えて、超精密・微細切削および難削材の切削に関する最新の情報や、それらを導入するためのヒントが得られます。そして、切削理論から最新の生産技術情報までを収得することで、設計者や生産技術者として視野が広がったり、柔軟な思考力を身に付けたりすることが期待できます。