仕事の道具が思ったように動かないとき、どうすればよいか。その道具を原理から知っていると、そんな事態にも対応できる。アナログ半導体の設計現場では、主に米国のベンダーの開発したEDAツールが使用されている。ベンダー主催のセミナーなどで使い方の講習を受けることはできても、基本的な原理から学ぶ機会はほとんどない。そこで、アナログEDAツールについて原理から利用技術まで学べる講座を、日経BP社は技術者塾として2015年12月17日に開催する(詳細はこちら)。EDAツールが思い通りに動かなくったときにも対応できる力を身に付けることができる。本講座で講師を務めるアナジックス 代表取締役の森山誠二郎氏に、講座の狙いや効果、RF CMOS回路設計のポイントなどについて聞いた。(聞き手は、日経BP社 電子・機械局 教育事業部)

――アナログEDAツールに関する知識や理解は、今後ますます必要とされるようになると聞きます。その理由は。

アナジックス 代表取締役の森山誠二郎氏
アナジックス 代表取締役の森山誠二郎氏

 これまで、アナログEDAツールを半導体集積回路(IC)の設計に利用できるのは、少数の専門家に限られていました。多くの回路設計者は、PCボードの上でICをモジュールとして使ってはいても、IC自体の設計に関わることはできませんでした。集積回路の開発は、初期コストが大きいため、大量生産品を対象にせざるを得なかったからです。IC設計者とボード設計者の区分けはハッキリしていました。

 最先端の超微細プロセスの開発には依然として多額の費用が掛かりますが、それほど微細でない製造プロセスは安価になってきており、付加価値の高い少量多品種の集積回路を開発しやすくなってきました。産業技術総合研究所(産総研)が開発するミニマルファブ生産方式のように、少量多品種に適した製造方式が普及すれば、より多くの人々が、半導体集積回路を設計できるようになります。そこでは、アナログEDAは必須のツールです。アナログEDAツールの知識や理解は、短期間に身に付くものではなく、今から取り組む必要があります。

 アナログEDAツールに関する知識や理解がますます必要とされるのには、別の理由もあります。デジタル回路といえども高速な回路の挙動や、ノイズやひずみのような非理想的現象の解析にはアナログEDAツールが不可欠です。