──逆に、なぜ欧米の自動車メーカーはCFRPの採用に積極的なのでしょうか。

影山氏:軽量化に対するこだわりが極めて強いからです。スポーツカーでは、燃費を改善することはもちろん、走行安定性を高めたい。車体を軽くして重心を下げる設計を狙います。

 一方、環境対応車では、軽量化によって低燃費を実現したい。EVやHEV、PHEVは重い電池やモーターを積む分、車体を軽くしなければクルマとして成立しなくなる。今後は、先進運転支援システム(ADAS)の充実で、そのままでは車両が重くなる方向にあります。従って、ボディーを軽量化したいというニーズは今後もますます高まっていきます。

 軽量化に対するこうした強いこだわりがあるために、欧米の自動車メーカーは自動車用のCFRPの生産に意欲を見せています。例えば、BMW社は、ドイツの炭素製品メーカーであるSGLグループと合弁で炭素繊維の生産に乗り出しました。米Ford Motor社は、トルコDowAksa社と自動車用の炭素繊維を量産する技術の開発で協力しています。DowAksa社は、米Dow Chemical社とトルコの繊維メーカーAksa Akrilik Kimya Sanayii社の合弁会社です。

 こうした欧米の自動車メーカーの動きに、日本の材料メーカーも追随しています。東レは米国の炭素繊維メーカーであるZoltek Companies社を買収。帝人や三菱レイヨンも自動車用の炭素繊維の生産で動き始めました。こうした日本企業の動きは、欧米企業のCFRPのニーズに応えようとするものです。

 自動車メーカー本体の動きに戻ると、BMW社はCFRP製ボディーを造る専用工場まで造るほどの力の入れようですが、ドイツAudi社もCFRPの採用に積極的です。イタリアAutomobili Lamborghini社は、CFRPでイタリアFerrari社に対抗していくという考えを示しています。

 旧態依然とした鋼よりも、CFRPを使うことで得られる優位性を採る。そのための課題は何とか乗り越える。こうした取り組みが製品の価値やブランド力を高めると考えている企業が欧米には多いのでしょう。