機器開発を進める上で必要不可欠な熱設計――。構造や材料の違いによって製品の性能が大きく影響を与える熱の性質を理解するためには、十分な基礎力の構築が重要だ。伝熱の基礎や入門的な熱対策、そして基本的な熱設計手法から実践的な温度測定まで、要点をまとめたクイズ形式で学べる講座を、日経BP社は技術者塾として2015年11月10日に開催する(詳細はこちら)。本講座で講師を務めるサーマルデザインラボ 代表取締役の国峯尚樹氏に、講座の狙いや効果、熱設計のポイントなどについて聞いた。(聞き手は、日経BP社 電子・機械局 教育事業部)

――熱設計への理解を深めることは、なぜ重要なのでしょうか。機器開発を進める上で、どのようなメリットがあるのでしょうか。

サーマルデザインラボ 代表取締役の国峯尚樹氏
サーマルデザインラボ 代表取締役の国峯尚樹氏

 熱マネジメントのスタイルとして、試作後に手を打つ「熱対策型」、図面化段階で確認する「熱解析型」、図面化前に対策を織り込む「熱設計型」があります。

 工程が後ろになるほど変更コストがかかり、大きな変更はできません。機器開発を進める上で重要なことは、形状を具体化する前に、理にかなった方針を立てておくことです。製品設計に関わる設計者全員がある程度の基礎知識を持つことで、手戻りを大幅に減らせます。

 出荷間際で発生する不具合を見ると、設計段階でもう少しだけ考えておけば起こらなかったトラブルが大半を占めます。それら多くのケースが「設計者の知識不足」に起因しています。

 これまでは、ファンやヒートシンクといった「冷却デバイスを用いた熱設計」は、専門家に委ねることも可能でした。しかし、最近の機器のように基板と筐体を使って熱拡散する冷却方法だと、設計に関わる全ての設計者の設計判断の集大成として温度が決まることになります。全員が少しだけ熱を意識した設計を行う。これが、結果的にトラブルを最小化し、開発期間を短縮、製品コストを低減する原動力となるのです。