──以上を踏まえ上で、日本のメーカーは今後どのように戦っていけばよいでしょうか。

山内氏:あくまで私見ですが、せんえつながら2点提言したいと思います。まず1点目は、解析当時(2015年)の懸念となりますが、Google社やGM社が先行していたデジタルマップやAIの高度利活用に向けた開発の挽回です。

 期待も込めていえば、この懸念は少なくともトヨタグループには杞憂に過ぎないかもしれません。解析から半年後、トヨタはシリコンバレーにToyota Research Institute(TRI)を設立し、5年間で1200億円をも投じることを表明しました。TRIは、初代CEOに災害救助用ロボットの競技会「DARPA Robotics Challenge」のプログラムマネージャーを務めたGill Platt氏を招聘し、そうそうたる研究陣とアドバイザリーボード陣を結成しています。理想的な挽回策ともいえ、今後のトヨタの巻き返しが期待されます。

 2点目はビジネスモデル開発の挽回です。上述したように、「技術で勝ってもビジネスで負ける」という虞を払拭すべく、すぐにでも着手すべきです。

 ただし、ビジネスモデルのメッカである米国の特許出願から得られた内容では、必ずしも日本のニーズに合うものとは言えず、創意工夫が必要です。例えば、日本では、高齢化や過疎化による「買い物難民」問題が顕在化しつつあり、都市部でもネットスーパーが人気です。しかし人手不足でサービスエリアを限定せざるを得ないのが現状です。あくまでも私案ですが、この現状とトレンドを勘案し、「無人店舗車」というアプローチが有望視されます。

 最近の報道でピンときたものがありました。「買い物難民」救済を掲げ、神奈川県藤沢市で自動運転車の実証実験を行ったロボットタクシー会社に関連する記事でした。同社親会社であるDeNAが宅配事業大手のヤマト運輸と提携し、「ロボネコヤマト」プロジェクトを始動するという記事であり、「ネットスーパー需要」を想起させる記載にピンときました。

 DeNAはSNS企業の雄として知られています。同社主力のスマホ向けゲーム事業が成功した要因としては、携帯電話の進化という環境変化を読み解き、「ゲームは専用端末で行うもの」という常識にとらわれず、「いつでもどこでも無料で楽しみたい」というユーザーのニーズに応えた点が挙げられます。

 このことからもうかがえる通り、良いものを作る「ものづくり」からユーザーのニーズに応えるものを作る「ことづくり」へのシフトが肝要と言えます。