液晶から有機ELへの移行が、スマートフォン用ディスプレーの市場で急速に進んでいる。ディスプレイーのフレキシブル化と相まって、有機ELシフトの波は、車載機器にも押し寄せている。日経BP社は「車載へ広がる有機EL産業と技術動向」と題したセミナーを、技術者塾として2017年12月7日に開催する(詳細はこちら)。本講座で講師を務める服部寿氏(分析工房 シニアパートナー)に、有機ELディスプレーの動向や、エンジニアに求められることなどについて聞いた。(聞き手は、田中直樹)

――「iPhone X」に採用されたディスプレーは、液晶ではなく有機ELでした。車載機器でも、有機ELへの期待が高まっています。液晶から有機ELへの移行によって、エンジニアに求められることは。

 有機ELディスプレー搭載のスマートフォンやタブレット端末、ウエアラブル端末の市場が急激に伸びています。大型有機ELテレビの普及も進んでおり、主に大型パネル向けにインクジェットによる塗布プロセスの開発も急ピッチで進められています。

 量産効果によって液晶よりも低価格なパネル製造が可能になってきたと、私は見ています。大型投資の計画も韓国や中国で進んでいます。

 有機ELパネルのフレキシブル化も進んでいます。基板は従来のガラスからプラスチックになり、このために新しい封止技術が採用されています。透明配線もITOから新材料に移行します。基本性能も、生産プロセス技術・生産管理についても、未発達の部分がまだ多く残っています。

 本講座では、有機ELの基礎技術、特徴、これまでの技術開発の経緯と残された課題、ディスプレーの応用動向、現状の生産プロセスと課題、政府プロジェクトなど、アジアの有機ELの全般動向を網羅的に分かりやすく解説します。産業全体、そして各社の事業の位置付けや時間軸を捉える効果が期待できます。

 有機ELの中小型パネルと大型パネルの開発目標、韓国・中国などでの投資動向、技術課題、折り曲げ型スマートフォンや大型テレビなどのアプリケーションの動向、韓国・中国などでの政府プロジェクトの最新情報をさらに深く理解することは、事業企画や販売戦略の上で大変重要です。今後のフレキシブル化のための課題や材料・プロセス開発状況についての知識も、製品開発企画において欠かせません。

――今回のセミナーは、どのような方々に参加いただきたいですか?

 有機ELに関係する材料・部材メーカー、フィルムメーカー、パネル製造メーカー、セットメーカー、照明機器メーカーの事業企画、開発企画、開発、製造、設計技術者や経営者、投資家、調査企業などの関係者の皆様にとって有用な情報を提供いたします。積極的なご参加をお待ちしています。

――今回のセミナーを受講することで、受講者はどのようなスキルを身に付けたりできるか、ご紹介ください。

 代表的なものを箇条書きで紹介します。

・有機ELディスプレーの特徴、基本的な技術知識が身に付きます。
・国内外の実用化の動きをつかむことができます。
・有機ELの特徴を生かす応用方法を考える上でのヒントが得られます。
・材料、製造方法、製造コストに関する知識が身に付きます。
・今後有機EL技術が大きく伸びるために解決しなければならない課題が分かります。
・LEDや液晶との競争の行方、将来の有機ELの進む方向、国際的な競合を見通すための知見が得られます。
・基礎的、総合的な知識が身に付きます。