テクノサポートオーテス代表、ワールドテック講師の岡本邦夫氏
テクノサポートオーテス代表、ワールドテック講師の岡本邦夫氏
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 自動車分野でトライボロジーの重要性が増している。低燃費競争が熾烈を極める中、部品同士の摺動部の摩擦や摩耗、潤滑について基本から見直したいというニーズが高まっているからだ。

 「技術者塾」において「自動車分野に必須のトライボロジーを極める」の講座を持つ、テクノサポートオーテス代表、ワールドテック講師の岡本邦夫氏に、自動車分野に必須のトライボロジーを学ぶ利点やポイントなどを聞いた。(聞き手は近岡 裕)

──今、トライボロジーを学ぼうとする技術者が増えていると聞きます。なぜでしょうか。

岡本氏:)トライボロジーは、摩擦や摩耗、潤滑に関する技術です。自動車はまさにトライボロジーの塊。エンジンやトランスミッション、各種ギアなど多くの摺動部を持った製品や部品で構成されているからです。

 ご承知の通り、現在、自動車分野では低燃費や省エネ、品質向上のニーズが非常に高くなっています。こうした背景から、摺動部をより一層改善することが技術者の重要課題となっているのです。具体的には、摺動部が原因で生じるエネルギーロスを低減することや、摺動部の消耗を減らすこと、そして、スティック&スリップ(滑り面で発生する振動現象)によって生じる異音・騒音を低減すること、などです。

 摺動部をより一層改善し、品質を高めるには、トライボロジーの基礎知識を習得し、設計や取り扱いのポイントを理解することが不可欠なのです。

──トライボロジーは、今後ますます必要とされるようになるのでしょうか。

岡本氏:クルマの低燃費や省エネ、品質向上を求める声は今後、ますます大きくなっていきます。そのためには、あらゆる部品の摺動部を、原理原則に基づきながらきめ細かく改良していかなければなりません。従って、トライボロジーに関する知識の重要性はさらに高まっていきます。

──トライボロジーを学ぶ上でのキーポイントを教えてください。

岡本氏:高品質な摺動部を開発・設計するポイントは、まず摺動部の摩擦のメカニズムを理解することです。その上で、エンジン油やグリースなどの潤滑剤をどのように選定すべきかを理解します。そして、その潤滑剤が摺動部材に与える影響を把握することです。

──技術者塾の講座では、どのようなポイントに力点を置いて説明しますか。

岡本氏:私はデンソーにおいて車載製品の開発・設計に数十年従事しました。そこで培った豊富な実務経験を生かし、アカデミックで平板なトライボロジーの解説ではなく、ものづくりの観点から解説します。すなわち、実務に生かせるトライボロジーに関する開発・設計のポイントを解説します。

──想定する受講者はどのような方ですか。また、受講することでどのようなスキルを得られますか。

岡本氏:自動車分野はもちろんですが、電子・電気や産業機器など他の分野であっても、摺動部を持つ部品を扱っていたり、摺動部の摩擦・摩耗・潤滑に関心を持っていたりする技術者が受講対象者となります。そうした人たちの中で、ものづくりの立場からトライボロジーについて学びたいと考えている初級から中級レベルの人に、特に役立つと思います。

 受講効果としては、トライボロジーについて基礎から実用レベルまでを1日で集中して学ぶことができます。摩擦・摩耗・潤滑に関する基礎知識を押さえ、潤滑剤が潤滑部材や周辺部材へ与える影響を理解できます。潤滑剤や軸受に関してトラブル事例を含めて学ぶので、実践力を身に付けることができます。講師からの一方的な講義で終わらせず、講師と受講者とのやり取りやグループ討議を行います。これらにより、部品の摺動部についてトラブルを起こさない最適な設計ができるようになります。