フランスや英国の政府が2040年以降、ガソリン車とディーゼル車の新車販売を禁止すると発表するなど、エンジン車を廃止する動きがにわかに活発化してきた。これに伴い、電気自動車への注目度が急上昇している。日経BP社は「電気自動車を進化させる、スイッチング電源の上手な作り方」と題したセミナーを、技術者塾として2017年12月13日に開催する(詳細はこちら)。スイッチング電源については、今年7月にも技術者塾を開催しており、約半年ぶりの開催となる。今回新たに加わる内容や特に力点を置く内容について、本講座で講師を務める西嶋仁浩氏(大分大学 理工学部 創生工学科 電気電子コース/エネルギーと暮らしの総合研究センター 助教)に聞いた。(聞き手は、田中直樹)

――2017年7月開催の技術者塾でスイッチング電源について解説していただきましたが、前回のセミナーにはなかった、新たに加わる内容について教えてください。

 大きく2つあります。(1)スイッチ素子の並列運転時における故障を防ぐ技術、(2)ACアダプターを小型・高効率化する電源用IC、の2つです。

 まず、(1)スイッチ素子の並列運転時における故障を防ぐ技術について。車載用途のように大電力を必要とするスイッチング回路においては、複数の半導体スイッチ素子を並列接続し、同時にオン/オフ駆動する構成が用いられます。しかし、個々のスイッチ素子の特性にはバラつきがありますので、ターンオン・ターンオフの際にいずれかの素子に電流が集中し、スイッチング損失の増加や熱暴走による破損が起こる可能性があります。そこで、セミナーでは、スイッチングタイミングのズレを補正する駆動回路をご紹介します。

 次に、(2)ACアダプターを小型・高効率化する電源用ICについて。リコー電子デバイスと共同開発したACアダプター用IC(開発品)を紹介します。従来のチョークインプット方式のACアダプターでは、日本で利用されているAC 100Vから海外で用いられているAC 240Vまでのワイド入力に対応させるための対策として、後段に取り付ける平滑コンデンサーや絶縁形DC-DCコンバーターに、高耐圧で大容量の部品を使用する必要がありました。本セミナーでは、ワイド入力対応であっても、100V入力専用のACアダプターと同じように後段部を設計できる手法を紹介します。

 これらの他にも「MHzスイッチングを実現するための回生形駆動回路:など、バージョンアップして情報を提供する予定です。

 また、前回のセミナーで追記した下記の内容についても、ぜひご聴講いただければ幸いです。

・数式を使って見える化する、磁気部品やMOSFETの詳細な振る舞い
・48Vハイブリッドシステムを搭載するAudi SQ7用DC-DCコンバーターや複数のACアダプターの分解調査結果
・最大10MHzで動作するコンデンサー分圧方式2相式コンバーター用IC(スイッチ、ドライバー、制御回路の一体型)の紹介
・瞬低補償機能を有したPFC回路