自動運転の実現を目指した技術開発が盛んだ。自動運転の進化を牽引している技術の1つが、LIDARを用いたセンシング技術である。日経BP社は「LIDARで進化する自動運転」と題したセミナーを、技術者塾として2017年11月21日に開催する(詳細はこちら)。本講座で講師を務める菅沼直樹氏(金沢大学 新学術創成研究機構 未来社会創造研究コア 自動運転ユニット ユニットリーダー/准教授)に、自動運転の動向や、今後のニーズに対応するために必要なことなどを聞いた。(聞き手は、田中直樹)

――自動車の自動運転について、この1年の市場動向、応用動向をご紹介ください。

 自動運転車では、通常はドライバーが行っている認知・判断・操作といった一連の動作を、センサーおよびコンピューターを用いて実現する必要があります。従来の自動車技術では、主に自動車メーカーや関連サプライヤーが所有していた機械的技術や、その制御技術が中心でした。それが、自動運転では、高度な情報技術が主たる重要な要素となります。

 特に、現在の自動運転システムではディープラーニング(深層学習)などの大規模な演算を必要とする技術が多数用いられます。そこで、従来の自動車メーカー以外に、半導体メーカーやIT企業などが新たなビジネスチャンスを求めてこの分野への参入を加速させています。

 また、現在の自動運転技術では,高精度の地図を活用するものがほとんどです。このため、地図メーカーや測量機器メーカーといった分野の企業も、様々な立場から自動運転の分野に参入してきています。

 一部では、例えば日産自動車の「セレナ」など、将来の自動運転につながるとみられるシステムの製品化も進んできてはいます。しかし、完全自動運転を見越した自動運転システムの技術開発は、まだまだ進歩の余地が多くあります。

――自動運転とセンサーについて、この1年の技術動向、技術トピックスについてご紹介ください。

 多くのメディアで報道されている通り、世界各国で様々な自動運転車の実証実験が行われています。日本においても、様々な研究機関が公道走行実験を開始するようになってきました。現時点では、単なる実験レベルにとどまる例も多々ありますが、今後は単なる実証実験ではなく、いかに製品化に向けた自動運転技術のインテリジェント化、ロバスト化を行うことができるかが重要な課題となります。

 自動で走行する自動車が確実に状況判断を行うためには、オンボードセンサーによる走行環境の認識が必要になります。オンボードセンサーによる認識では、障害物検出と走行可能空間や死角領域の抽出、自動車や歩行者といった物体種別の識別、移動物体の運動推定とその軌道予測といった技術が求められます。また、地図を活用した自動運転では、車の位置を正確かつロバストに推定する手法も必要です。

 このため本セミナーでは、金沢大学が先駆的に実施している市街地での公道走行実験に実際に用いているアルゴリズムを例題として取り上げ、様々なアルゴリズムの概要について解説します。

――自動運転とセンサーの分野で、この先の動向、今後のニーズに対応するために必要なことは。

 上述の通り、自動運転技術では、通常はドライバーが行っている認知・判断・操作といった一連の動作をセンサーおよびコンピューターを用いて実現する必要があります。これを実現するためには、センサーによる周辺環境の確実な理解と、それに基づく適切な判断が必要となります。従って、オンボードセンサーによる情報処理技術が、今後のニーズに対応するための最も基本的かつ重要な要素技術になると予想されます。

 そこで、本セミナーでは、自動運転システムに用いられる代表的なセンサーであるLIDARによる各種認識技術の概要について述べます。また、特に最も困難な技術課題の1つである「他車の将来の動きをいかに予測するか?」については,基礎的な理論から詳細なアルゴリズム解説も行います。