アイデア代表取締役社長の前古護氏
アイデア代表取締役社長の前古護氏
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 技術的な課題を解決するためにTRIZに期待する日本企業が増えている。TRIZは革新的なアイデアを発想する合理的方法論としてよく知られている手法だからだ。だが、理論の習得に時間がかかるなど課題があり、うまく使いこなせない技術者が少なくない。

 「技術者塾」において「最新! TRIZの日本式活用法」の講座を持つ、アイデア代表取締役社長の前古護氏に、日本企業の技術者がTRIZをうまく使いこなすようになるためのポイントについて聞いた。(聞き手は近岡 裕)

──日本企業の中でTRIZに期待する声が増していると聞きます。TRIZへの期待が大きくなっている背景には何があるのでしょうか

前古氏:TRIZへの期待が増しているのは、日本の技術者に散見されると言われている4つの「弱点」を解消し、革新的なコンセプトを生み出せるからです。それは、[1]心理的惰性(思い込みや特定のコンセプトへのこだわり)を持ってしまうこと、[2]限られた分野の知識だけで考えてしまう(専門分野の知識に偏ってしまう)こと、[3]的外れの目標に向かって進んでしまう(問題点の正確な把握ができていないのに進んでしまう)こと、[4]トレードオフによる折衷案(背反事象にバランスをとった妥協案)による解決を望んでしまうこと、です。

 TRIZは、技術的な問題を解決した先輩である優秀な研究者・技術者が、特許出願という形で残した最良の解決プロセスを分析。最良の解決方法の考え方を、ヒントとして示すことができる方法です。

 簡単に言えば、「人の知恵をふんだんに活用しよう。しかも効率的に」という考えですから合理的です。また、優秀な技術者であれば既に実行していることを体系的に網羅した方法なので、TRIZを試した人の多くが気に入るわけです。

 TRIZを活用すると、難しい技術問題を解決する最強のコンセプトを創出でき、特許出願につながります。加えて、技術者の潜在能力を引き出したり、創造的洞察力を高めたりして、技術者のモチベーションを高めることができます。さらには、技術の伝承や創造的人材の育成、組織の活性化にまで効果があります。

 それもそのはずです。TRIZを使うことで、昨日まで考えつかなかった解決策が今日から湧き出るように発想できるようになるのわけですから。

──TRIZは、今後もますます必要とされるようになるのでしょうか。

前古氏:企業は「良い品質の製品を速く安く開発する」ことで利益を得なければなりません。そのためには、顧客のハートをくすぐって感動を与える製品を他社に先駆けて創り出す必要があります。もちろん、どのような製品が受け入れられるかを知るための市場予測や製品企画も大切です。しかし、いくら良い製品を企画しても具現化できなければ、絵に描いた餅にすぎません。製品として形にするには、どれほど難しくても技術課題を解決する必要があります。その勝敗は、スピードとアイデアの質によって左右されます。

 ヒット商品がなかなか生まれない。競合製品に対して性能や品質面で明確な差異化ができない。海外の競合企業に猛追されてコストで負けてしまう…など、多くの企業が今、共通の課題を抱えています。そのため、競争は今後、ますます激化していきます。この競争に勝つためには、直面した技術課題をより速くよりうまく解決しなければなりません。

 ここにTRIZが役立ちます。TRIZは、短時間に合理的にアイデアを創出する技法。従って、技術者が保有している固有技術としての知識と経験と勘を最大限に生かしながら、より速くよりうまく技術問題を解決することが可能です。TRIZを活用する場合としない場合では、結果に雲泥の差が出ます。