日産自動車が開発したデザインレビュー手法 「Quick DR」が注目を集めている。その理由は、開発期間が限られる中で、不具合の発生を効率よく未然に防止できることにある。「技術者塾」では「開発者から学ぶ 日産の不具合未然防止手法「Quick DR」」の講座を開催する。講師は、日産自動車においてQuick DRを開発し、導入推進した同社技術顧問の大島恵氏と同社車両品質推進部主管の奈良敢也氏。両氏がQuick DRとは何かを解説する(注:日経ものづくり2013年1月号解説「短期間で効果的に問題を発見・解決するQuick DRを始めよう」を再掲載)。

大島 恵 氏=日産自動車 技術顧問
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大島 恵 氏=日産自動車 技術顧問
奈良 敢也 氏=日産自動車 車両品質推進部 主管
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奈良 敢也 氏=日産自動車 車両品質推進部 主管
 市場における不具合や不満の発生を未然に防止するために、ほとんどの企業が製品の開発プロセスの中でデザインレビューを実施している。しかし、デザインレビューが必ずしも有効に機能しているとはいえないのではないだろうか。

 日産自動車(以下、日産)では現在、一般的に行われている従来型のデザインレビュー(これをFull Process DRと呼んでいる)と使い分ける、もしくは組み合わせる形で、もう1つのデザインレビューを活用している。それが「Quick DR」である。日産では2008年からQuick DRを含めたデザインレビューを標準プロセスとしている。

 ここでは、日産でQuick DRが生まれたきっかけと、その概要について取り上げる。

 まず日産がQuick DRを導入した背景と経緯を振り返りつつ、Quick DRとは何かを説明しよう。

 日産は2005年4月、品質活動の推進を担う専門の部署「車両品質推進部」を開発部門の中に設立した。品質に特化した部レベルの組織を開発部門の中に置くのは、日産として初めてのことだった。

 当時、米国をはじめとした海外へと市場の拡大を図る中、生産拠点やそこで働く従業員、さらには車種ラインアップなどの点で、さまざまな新しいことにチャレンジしていた。その影響もあり、幾つかの品質問題が発生していた。そのため、「品質で他社に後れをとっているのではないか」という危機感が高まっていた。

 そこで、日産が品質の強化に取り組むに当たって目標としたのは、開発/生産フェーズにおいて「不具合/不満を出さない」ことと、市場フェーズにおいて「不具合/不満を驚くほど速く直す」ことの2つだ。これを、日産では「品質の両輪」と呼んでいる。