トヨタIT開発センター 研究部 グループリーダー 那和 一成 氏
トヨタIT開発センター 研究部 グループリーダー 那和 一成 氏
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 クルマにとって新しい価値となるものを、進化の速いIT業界の技術から見つけ出す──。こうした狙いから、トヨタIT開発センター(本社東京)が興味深い活動を展開している。「目利き活動」と呼ばれるものだ。研究テーマを決める際に、世界の最先端技術の中から有用な技術や情報を探し、素早く見極めるための活動である。「技術者塾 特別編」の「新事業の創造に効く 学術 情報・ビッグデータの生かし方」(2016年10月5日)に登壇する、トヨタIT開発センター研究部グループリーダーの那和一成氏に、目利き活動の詳細を聞いた。(聞き手は近岡 裕)

──自動車を開発するトヨタ自動車グループの中で、「トヨタIT開発センター」という名称はユニークに聞こえます。同グループにおけるトヨタIT開発センターの位置づけを教えてください。

那和氏:弊社は研究開発に特化した企業体です。社員は100人ほど。日本の他、米国にも拠点があって、シリコンバレーとニューヨークで35人が働いています。我々はトヨタ自動車よりも「とんがったこと」を行っています。その理由は、先端的な研究開発をして将来の製品開発につなげないと、クルマの競争力を高めることができないからです。自動車会社に限らず、あらゆる会社に競合企業の存在があるのですから、競合企業よりも先をいく研究開発を行わなければ、競争に勝ち残ることができません。

 大株主はトヨタ自動車ですが、KDDIも株主です。従って、私たちはクルマとICTの分野における付加価値向上を目指しています。クルマはもともと「走る」「曲がる」「止まる」という基本機能を備えた製品でした。そこから「つながる」という機能が登場し、近い将来は通信機能を持ってクラウドとつながるだろう。従って、クルマと無線を含むICTとの技術の融合領域における研究開発が必要となってくる──。こうした背景からトヨタIT開発センターが生まれました。

 クルマとICTでは持つ文化が全く異なります。クルマは信頼性が全てと言っても過言ではなく、ICTの方はとにかく技術の進化が速い。そこで、それらの融合を図ることを目的に設立されたのです。現在では当たり前に聞こえるかもしれませんが、設立された2001年当時は画期的な考えだったと思います。