自動運転や安全運転支援には、無線通信が必ず使われる。その無線通信で必要となるのがアンテナだ。車載用アンテナは、自動車という限られたスペースに設置しなければならない。そのため、設計には特有のポイントがある。日経BP社は「車載用アンテナ設計」と題したセミナーを、技術者塾として2017年10月19日に開催する(詳細はこちら)。本セミナーで講師を務めるアンプレット通信研究所(ACL)の根日屋英之氏に、車載アンテナ設計を理解する上で重要なことなどについて聞いた。(聞き手は、田中直樹)

――「車載用アンテナ設計」に注目が集まっていると聞きます。

 自動車の自動運転や安全走行の技術進化を見ていると、自動車は外部との情報のやり取りが必要になります。自動車は移動するものですから、そこに用いられる情報通信の手段は無線通信です。無線通信にはアンテナが必要ですから、今後、アンテナに関する広い知識がますます必要になるでしょう。

 いろいろな無線通信機器を自動車に搭載するといっても、アンテナが設置できる場所は限られています。従って、車載用アンテナの設計には、単にアンテナだけの設計ではなく、アンテナと無線通信機器間の配線においても、無線システム間の干渉や雑音の影響を受けない(与えない)ような配慮も必要です。また、自動車の空力特性や燃費に支障をきたさないように、車体からの突起が少ない低姿勢アンテナや平面構造のアンテナの設計ノウハウが必要になります。

――車載用アンテナ設計に関する知識の習得と理解を進める上で重要なことは。

 車体(ボディー)のイメージを積極的に利用する不平衡型アンテナを用いることにより、アンテナの寸法も自由空間上に設置する平衡型アンテナの半分の大きさにできます。そこで、アンテナに対して車体がどのような電気的な影響があるのかを理解する必要があります。アンテナ系で雑音を拾わないように、給電線やワイヤーハーネスの引き回しにも簡単なノウハウを知っておく必要があります。

 複数のアンテナが必要なキーレスエントリーでは、アンテナの数を減らす技術として、人体通信技術を自動車へ導入することも期待されています。新しい無線通信技術を知ることが、車載用アンテナの設計にも役立ちます。

――今回のセミナーで、特に力点を置いて説明するポイントは。

 私は自動車会社で電装機器の設計に従事していました。その経験から、単にアンテナの特性を追求する設計手法だけではなく、空力特性や軽量化を意識したアンテナ設計が必要であることを常に感じています。

 そこで、本セミナーでは、車体(ボディー)の影響(効果)を積極的に利用する不平衡型アンテナと、車体としての空力特性に影響しないような低姿勢アンテナの説明に重きを置く予定です。

――今回のセミナーは、どのような方々に参加いただきたいですか?

 アンテナ設計は、電子系の技術者の専門技術ではありません。アンテナの基礎的な理論の習得をした全てのジャンルの人たちは、アンテナ設計のプロフェッショナルになりえると私は考えます。

 今回のセミナーでは、私が日経エレクトロニクスに執筆した連載記事「無線モジュールの要、アンテナ設計の基礎」(2015年6月号~同10月号)の内容も含め、アンテナの基礎的な理論を分かりやすく解説します。アンテナにご興味がある方ならどなたでも、ご参加いただきたいと思います。