BtoCからBtoBまで、多数のセンサーが日常生活の中に深く入り込むようになってきた。センサーからの情報を利用する場面は今後も増え続ける。センサーの開発は、計測の基本的な概念を理解しているだけでは十分とはいえない。測定対象を電気信号に変換するための物理現象を理解して、適切な手段を選定し、要求仕様を実現するための方法を考える必要がある。幅広い知識と経験が要求されるため、開発の勘所をつかむのが難しく、試行錯誤を繰り返して手探りで開発を進めていかなければならない局面がしばしば見られる。

 そこで、日経BP社は「試行錯誤から抜け出すための、センサー開発入門」と題したセミナーを、技術者塾として2016年9月29日に開催する(詳細はこちら)。本講座で講師を務める飯野俊雄氏(工業所有権協力センター 主席部員)に、センサーの最近のトレンドや、センサー開発に携わる技術者にとって重要だと考えることを聞いた。(聞き手は、日経BP社 電子・機械局 教育事業部)

工業所有権協力センター 主席部員の飯野俊雄氏
工業所有権協力センター 主席部員の飯野俊雄氏

――センサー市場で、特にこの1年、動きが大きい分野は。

 イメージセンサーが一番に挙げられるのではないでしょうか。イメージセンサーは、ソニーをはじめとする日本の半導体メーカーが得意な分野です。スマートフォン(スマホ)用のカメラの需要が一服したこともあり、車載カメラや監視カメラのような分野が脚光を浴びるようになってきました。

――センサー分野の、この1年の技術動向、技術トピックスをご紹介ください。

 車載カメラ用のイメージセンサーについていえば、暗いトンネル内と、その先の明るい外界の画像を同時に取得する必要があります。また、低照度下で夜間の画像を取得することも必要です。いずれもダイナミックレンジの確保、S/Nの向上というセンサー開発の基本に関わる重要な課題です。これらの分野で着実な進歩が見られました。詳しくは日経エレクトロニクス 2016年5月号の記事「王者ソニーを脅かす、CMOSセンサー新技術」をご参照いただければと思います(編集部注:日経テクノロジーオンライン有料会員の皆様はこちらからご覧いただけます)。

――センサーを開発する技術者にとって、今後のニーズに対応するために必要なことは。

 技術的な課題の解決もさることながら、収益を上げることにより継続的な事業の中にセンサーを位置づけることが一層問われるのではないかと思います。例えば、トリリオンセンサー注)の収益が、センサーから得られたデータの解析を担当するIT企業に集積することへの危機意識は、その代表的なものだと思います。

注)毎年1兆個規模の大量のセンサーを社会が消費し活用する。そうした近未来のセンサー社会を構成するセンサーを「トリリオン・センサー(trillion sensor)」と呼ぶ。(三宅常之, 「トリリオン・センサー 桁違いにカバー範囲が広いセンサーネットを実現」, 『日経テクノロジーオンライン』, 2014年1月20日.)