産業機器や鉄道車両から家電や電気自動車(EV)まで、モーターのデジタル制御技術が幅広い分野で使われるようになってきた。一方、制御回路やモーターに掛けられるコストへの要求は厳しさを増している。モーターのデジタル制御のスキルがないと、製品の性能や品質の確保が難しい時代になってきた。そこで、日経BP社は「モータ制御設計を連続系理論から適切にデジタル化へ展開する手法」と題したセミナーを、技術者塾として2017年6月30日に開催する(詳細はこちら)。本セミナーで講師を務める松本康氏(富士電機 パワエレシステム事業本部 開発統括部長 兼 開発統括部 パワエレ機器開発センター長)に、モーター制御のポイントやスキルアップのために重要なことなどを聞いた。(聞き手は、田中直樹)

――今なぜ、モーターのデジタル制御のスキルが問われているのでしょうか。

 モーターのデジタル制御技術は、産業機器、鉄道車両のほか、家電や電気自動車(EV)など幅広い分野で使われるようになり、多くの技術者がマイコンを用いたモーター駆動の開発に従事するようになっています。一方、制御回路やモーター(機械系を含む)へ掛けられるコストへの要求は厳しくなっています。従って、正しいモーター制御設計理論と適切なデジタル化手法を理解しないと、性能と品質の確保が難しくなってきています。

――モーターのデジタル制御技術は今後、ますます重要になるのでしょうか。

 はい。さらなるコストダウンや生産能力向上の要求が強まると考えられるからです。高まる性能要求に応えるためには、モーター制御の原理原則を理解し、適切なデジタル化手法を把握することが、ますます重要になるでしょう。

――モーター制御とそのデジタル化手法のキーポイントや、この先の動向、および今後のニーズに対応するには何が必要か、教えてください。

 連続系理論でのモーター制御設計の基本を理解することと、連続系理論をデジタル制御で実現する手法がキーポイントになると思います。マイコンの演算能力はすでに十分に高く、デジタル化を意識しなくても性能を発揮できるレベルに到達しつつあります。性能を追求するためには、インバーターの動特性も踏まえたデジタル化を考える必要が出てくるでしょう。

 さらに、SiCなど新パワーデバイスの実用化が進み、高速・高周波で動作するインバーターの性能の良さを生かすための制御のあり方を検討することも重要になると考えています。