ビジネスモデル特許解析からニーズを探る

──「ことづくり」領域でのニーズに応じた進化形である「特許マーケティング2.0」とは、具体的にはどのような手法なのでしょうか。

山内氏:特許の世界では、2000年頃にブームとなった「ビジネスモデル特許」というジャンルがあります。また、(便宜上、厳密な説明を割愛しますが)各国の特許出願1件ごとに国際的に共通に付与される技術的インデックスが存在します。その中にビジネスモデル特許との関連性の高いものが含まれます。

 少々専門的な話となりますが、国際特許分類〔通称IPC(International Patent Classification)、日本独自のFI(IPCを基礎として細展開された日本国特許庁独自の分類)とは上位部分で共通〕の「G06Q」が該当するインデックスです(特許庁の関連サイト)。

 ビジネスモデルは別名、「儲けの仕組み」とも呼ばれます。ハードウエアよりもソフトウエアの性格が強く、また「ものづくり」よりも「ことづくり」の領域との親和性が高いものです。これに着目したのが「ことづくり」領域でのニーズに応じた進化形である「特許マーケティング2.0」です。分かりやすく言えば、ビジネスモデルの特許情報を切り口としてどのようなニーズやアイデアがあるかを確認し、その結果に基づいて検討するものです。 

 例えば、自動車業界では、上述した自動運転技術の開発競争が激しく、新規参入をもくろむ異業種参入も活発です。ここで、「ことづくり」領域で優位に立てれば、コモディティー(陳腐)化に陥ることなく高い収益性を確保することが可能です。

 従って、世界中の自動運転関連の特許情報から、ビジネスモデル特許の関連情報に絞り込んで個別に検討すれば、自動車業界において効率的に「ことづくり」領域でのニーズやアイデアに基づく解析が可能となります。その結果を反映したのが書籍「知財情報戦略」なのです。

 特に、欧米企業やシリコンバレーなどに拠点を置くスタートアップは、ビジネスモデルの開発に積極的です。その開発の成果であるビジネスモデル特許の情報を解析すれば、日本企業にとって有益な気付きが得られます。  

 そうそう、1つ前の質問への追加回答となりますが、ビジネスモデル特許の情報自体、特許固有の話のため、「特許マーケティング2.0」を活用すれば、従来のマーケティング手法では得ることが難しい異質の効果(一層のメリット)を期待できます。