Excelプログラムを使った熱計算の実例

 図2のようなExcelプログラムを用いて、部品の温度を計算し、設計パラメーターを変えたときの熱対策効果することができます。部品の温度を求めるために必要なデータを自分で計算し、Excelプログラムのセルに入力します。

図2 Excelプログラムのセル
図2 Excelプログラムのセル
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 今回の場合、「熱コンダクタンス」のデータの入力が必要になります。熱コンダクタンスとは、部品や銅箔などの各要素(節点)間を熱がどれくらい伝わりやすいかを示す指標です。系を電気回路に見立てると、ちょうど節点間のインピーダンスの逆数に相当します。今回の系を電気回路に見立てたものを、図3に示します。

図3 電気回路に見立てた図
図3 電気回路に見立てた図

 熱コンダクタンスは、次のように求めていきます。幾つか具体例を示します。

◎部品(1)と部品下の銅箔(2)の間の熱コンダクタンス

 この場合、部品と銅箔の間にある、はんだの熱コンダクタンスを求めることになります。これは、「はんだの表面積×はんだの熱伝導率÷はんだの厚み」によって求められます。「0.01(m)×0.017(m)×60(W/mK)÷0.0002(m)」となり、熱コンダクタンスは「51(W/K)」と求まります。

◎部品下の銅箔(2)とビア部の銅箔(3)の間の熱コンダクタンス

 この場合、部品下とビア部の銅箔の間にある、配線の熱コンダクタンスを求めることになります。これは、「配線の断面積×配線の熱伝導率÷配線の距離」によって求められます。配線の熱伝導率は380W/mKと分かっているものとします。すると、配線の熱コンダクタンスは「0.01(m)×0.000035(m)×380(W/mK)÷0.002(m)」となり、計算すると「0.0665(W/K)」と求まります。

 このようにして求めた熱コンダクタンスをExcelプログラムのセルに入力すると、部品の温度を計算できます(図2)。この方法を使うと、「銅配線の厚み」「サーマルビアの本数」「部品とサーマルビアの距離」「ヒートシンク面積」などの設計パラメーターを変えたときの部品温度がすぐに計算できるため、熱対策効果を容易に検討できます。

 図2に示したように、当初の設計条件では、部品温度は74.3℃になります。これに対して、銅配線の厚みを2倍の70μmにしたり、サーマルビアを2倍の15本にしたり、部品とサーマルビアの距離を半分の1mmに縮めたりすると、部品温度は72.2℃に下がることが、Excelプログラムによる計算の結果として分かります。同様に、ヒートシンク面積を1.2倍にすると、部品温度は71.4℃になることも分かります。

 このような検討をすることで、「放熱する部品とサーマルビアとの距離を近づける方法が、コストパフォーマンスが良いと考えられる」という結論を導き出すことができます。

 2017年5月26日開催のセミナー「車載機器の熱計算とExcelシミュレーション」では、Excelによる演算技法について国峯氏が具体的に解説します。Excelプログラムを配布し、受講者が自分のパソコンを使って実際に演習できます。Excelプログラムは、使用者が改良してカスタマイズすることも可能です。また、伝熱のメカニズムや基礎方程式、連立計算プログラムなどについても解説する予定です。