東北大学 大学院工学研究科 バイオロボティクス専攻 教授の田中秀治氏
東北大学 大学院工学研究科 バイオロボティクス専攻 教授の田中秀治氏
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 「MEMS(微小電子機械システム)」市場が成長を続けている。スマートフォンなどで大量に採用されたことから、研究開発への投資が活発化。これにより技術の高度化が進み、小型化と低コスト化が加速。実用範囲がさらに広がるといった好循環が起きている。同時に、自動運転車や5G通信端末、ロボットなどの新たな応用範囲を視野に、高性能化に向けたMEMSの研究開発も進む。発展するMEMSの技術と市場のトレンドを分かりやすく解説する。

 IT機器の価値を決めるのは、必ずしも演算能力とは限りません。スマートフォンやゲーム機器を見れば分かるように、ユーザー・インターフェースが製品の付加価値のかなりの部分を占めています。そして、ユーザー・インターフェースの中で重要な役割を担っているのがセンサーです。最近は、さまざまなセンサーが搭載されたリストバンド・腕時計型の情報機器を使って自らの活動量を把握し、健康維持や体調管理に利用している人も増えてきました。

 自動車分野では今、環境性能と安全性能が最も重要な付加価値となっています。前者では特に燃費向上への要求が高く、これを大きく支えるのがセンサーによる高度な制御です。後者でも、エアバッグからアンチロック・ブレーキ・システム(ABS)、横滑り防止などの車体制御までセンサーに大きく依存しています。

 実は、こうしたセンサーの多くはMEMS(Micro Electro Mechanical Systems)技術で造られています。先進国でMEMSを使わずに生活している人はほとんどいないと言っても過言ではありません。