周波数選択・制御デバイス

 IoTにおいて「もの」は主に無線通信によってつながります。この無線通信の根幹である周波数制御のかなりの部分もMEMSによって実現されています。具体的には、周波数を選択するFBAR(Film Bulk Acoustic Resonator)フィルターと、周波数基準となるMEMSタイミング・オシレーターが、それぞれSAW(Surface Acoustic Wave)フィルターと水晶発振器とともに携帯電話やスマートフォンに大量に使われています。

 今後、無線通信トラフィックがさらに増えて周波数資源が枯渇していくと、より高度な周波数制御が求められるようになってMEMSの役割はますます重要になります。実際、2014年から2015年にかけてMEMSの売り上げが最も伸びた企業はAvago Technologies社と米Qorvo社であり、両社の成長率は年間数十%にもなります。弾性波フィルターの需要は旺盛でASP(Average Selling Price)が下がっていない現状から、これらの企業の好調はしばらく続くと思われます。

 最近、次世代の無線通信規格である5Gが議論されており、数十GHzまでの高い周波数が使われると言われています。この周波数帯では従来のSAWフィルターは使えず、FBARフィルターを含む、よりMEMS的なデバイスが使われると考えられます。高い周波数では見通し通信しかできないため、たくさんの基地局を設置することになりますが、その中にも高度な周波数制御デバイスが必要です。

 他に、既に割り当て済みの周波数帯を空いているときに二次利用する技術も考えられます。その代表例は、テレビの空きチャンネルを利用するホワイトスペース・コグニティブ無線です。ここでは、任意の空き周波数を選択するチューナブル・フィルターも必要になることでしょう。