清川メッキ工業代表取締役社長の清川肇氏
清川メッキ工業代表取締役社長の清川肇氏
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 めっきの重要性を再認識する技術者が増えている。製品の品質を左右するだけではなく、高機能化や高付加価値化のカギを握る技術だからだ。しかも、めっきの技術は日々進化しており、応用範囲を広げている。ところが、めっきについてよく知らないという設計者や生産技術者、購買担当者は少なくない。「技術者塾」において「めっきの基礎から最新活用法まで」の講座を持つ、清川メッキ工業代表取締役社長の清川肇氏に、めっき技術について学ぶポイントを聞いた。(聞き手は近岡 裕)

──めっき技術を今、なぜ学ぶ必要があるのでしょうか。また、習得する利点を教えて下さい。

清川氏:めっき技術には、耐食性を向上させる防食めっき、見栄えを良くする装飾めっき、電子部品のはんだ付けや機械部品の耐摩耗性向上など製品の性能を向上させる機能めっきがあります。めっきを施す母材にも金属やプラスチック、セラミックスなど多種多様な材料がある上に、それぞれの材料で前処理が異なります。また、同じニッケルめっきでも使用する製品や業界などによって導電性や硬さ、膜厚分布、すべり性といった使用目的が異なることがあります。その場合、電解めっきや無電解めっきなど複数ある工法の中から最適なものを選ぶ必要があるのです。

 めっきで大切なことは、顧客のニーズを正確につかみ取り、めっき皮膜の選定や膜厚、検査方法などの仕様を確立させることです。設計者や生産技術者、購買担当者などがめっき技術の基本を知らないままでは、製品の品質を損ねたり期待する機能を満たせなかったりする可能性があります。また、最新のめっき技術を押さえていない場合は、製品に新たな付加価値を付与する機会を逸することになりかねません。

 逆に、めっき技術に精通していれば、多種多様な選択肢の中から狙った目的に最適なめっきを選ぶことができます。すると、不具合を未然に防いだり、過剰な仕様を排除して適正な仕様に導いたり、製品に新たな機能や価値をもたらしたりする効果が得られるのです。

──めっき技術は、今後ますます必要とされるようになるのでしょうか。

清川氏:めっき技術は、電子・電気や半導体、自動車、医療、建築などさまざまな業界で幅広く使われています。そして今、どの業界でも製品や部品の小型化や微細化、高機能化が加速している。それらを実現するには既存の材料では限界があり、従来とは異なる材料や進化した材料を採用するケースが増えています。ところが、そうした新しい材料に従来のめっき工法を使うと、性能や品質などの点で問題を起こす可能性があるのです。新しい材料には、それにふさわしい新たなめっき技術が必要となります。

 加えて、環境負荷軽減への対応がますます厳しくなっていきます。RoHS指令(有害物質使用制限指令)に端を発した環境規制は、REACH(化学物質の登録、評価、認可および制限)規則に発展し、規制物質の範囲が拡大しています。この傾向は今後も強まる一方でしょう。

 つまり、これから登場するであろう新しい材料や環境規制に対応するためにも、めっきの基礎から最新技術までに習熟しておく必要があるのです。技術者塾の講座では、難素材へのめっき工法や環境規制に対応するめっき工法の事例も紹介します。