2015年8月の宇宙ビジネス通信をお届けします。8月は日本企業の活躍を報じるニュースが多く出されました。今月は、これらを中心に以下の5本をピックアップしました。

1位:「国産ロケットが負の連鎖を断ち切る」

 8月19日、宇宙ステーション補給機「こうのとり」5号機(HTV5)を搭載したH-IIBロケット5号機が、種子島宇宙センターから打ち上げられました(発表資料)。この打ち上げの成功は、国産ロケットの高い技術力と信頼性を世界にアピールしたという点で、大きな意味を持つものです。

 宇宙ステーションへは、滞在している宇宙飛行士の食料、科学実験や各種任務のために必要な装置等の物資を届けることが必要不可欠です。そのため、定期的にロケットでその物資を宇宙ステーションに届ける必要があります。ところが、このミッションは不運続きでした。2014年10月米国Orbital ATK社の「Antares」に、2015年4月ロシア連邦宇宙庁の「Progress」に、さらに2015年6月米国Space X社の「Falcon 9」に、それぞれ宇宙ステーション補給機が搭載され打ち上げられましたが、なんと3回連続失敗となってしまったのです。この危機的状況を回避したのが、日本の三菱重工業のH-IIBロケットでした。

 8月28日に、三菱重工業はH-IIAロケットの改良を公開しました。2段目ロケットに改良が加えられ、ロケットの飛行時間を延ばし、静止軌道近くまで衛星を輸送することを可能とすることで、衛星に搭載している燃料の消費を抑え、衛星自体の寿命を延ばすことに一役買える施策を打ち出しました。

 三菱重工業は、2009年1月に韓国航空宇宙研究院(KARI)から多目的実用衛星「KOMPSAT-3」、2013年9月にはカナダTelesat社の通信衛星「TELSTAR 12V」、2015年3月にはドバイEIASTから観測衛星「KhalifaSat(ハリーファサット)」の打ち上げ輸送サービスを受注しています。

 世界のロンチサービス市場は、フランスArianspace社、米ULA社などが多くのシェアを獲得しており、様々なコスト削減策で商用衛星打ち上げ輸送サービスの市場のさらなる囲い込みを画策しています。

 H-IIAの改良やH-IIIなどで見られる新しいアイデアと、H-IIA、H-IIBの有する高い信頼性(高い成功率)、さらにはロケットや地上設備の不具合などによる打ち上げ延期の確率が少ないこと、などは日本の大きな強みといえます。ロケット自体の改良による打ち上げコストの削減策以外にも、衛星の燃料削減など衛星に“やさしい”施策など、世界のロケット市場の方向性とは異なる方向性を進むことで、世界には真似できない付加価値を付け、今後世界のロンチサービス市場のシェアを獲得することを期待します。

宇宙ステーション補給機「こうのとり」5号機(HTV5)を搭載したH-IIBロケット5号機の打ち上げの様子(出所:三菱重工業ホームページ)