2016年月の宇宙ビジネス通信をお届けします。今月は、米国ベンチャー企業の月面探査機の許認可が下りるという歴史的快挙のニュースが報じられました。

1位「ベンチャー企業が米国政府から月面商用利用許可を取得」

 2016年8月3日、米国ベンチャー企業Moon Express社は、自社が開発する月面探査機について、商用目的での許認可を米国連邦航空局(FAA)から受けたと発表しました(ニュースリリース)。

 米国Moon Express社が許認可を受けた月面探査機は、月に軟着陸できるもので、宇宙旅行や資源探査などの商用目的に使う予定だとしています。

 過去に月面に軟着陸した探査機といえば、1960~70年代の世界初の月面軟着陸となる旧ソビエト連邦のルナ9号や米国のサーベイヤー計画やアポロ計画などの探査機が有名です。これらは、政府もしくはNASAなどの国家の宇宙機関が技術開発や理科学探求の目的に打ち上げられたもので、このMoon Express社の商用目的の月面探査機とは異なるものです。

 このニュースは、宇宙活動法という法律が大きく関係しています。米国、フランスなどの宇宙先進国やノルウェー、南アフリカなど非宇宙先進国を含む世界で10カ国以上の国で宇宙活動法を制定しています。この宇宙活動法は、自国での宇宙活動のルールを取り決めたもので、打上げ失敗による損害などを可能な限り排除するために、ロケットや人工衛星に一定の技術基準や安全基準を設けたり、打ち上げの際は損害賠償責任保険の加入などを義務付けたりするなどの責任を課しています。米国では、FAAが、商用目的に打上げられるロケットや人工衛星などの技術審査、安全審査を実施しますが、探査機による技術審査、安全審査に許可を出したのは今回が世界初となります(FAAのニュースリリース)。2015年11月号では、米国での小惑星の所有権と採掘を認める宇宙法の成立に関するニュースやルクセンブルグ政府の宇宙資源探査に関する法整備に関するニュースをお伝えしました。国連の宇宙条約には、宇宙は万人のもので平等に利用されるべきものという規定がありますが、米国は、月面という公平平等の地に、民間の惑星探査事業を進出させ、世界的な競争での優位性を築きたいという野望が垣間みられます。

米国ベンチャー企業Moon Express社の資源探査機のイメージ
米国ベンチャー企業Moon Express社の資源探査機のイメージ
出所:Google Lunar XPrize ホームページ
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