2016年6月の宇宙ビジネス通信をお届けします。今月は、惑星探査のニュースが目立ちました。

1位「米国宇宙ベンチャー企業が新型月面着陸機」

 2016年6月2日、米国宇宙ベンチャー企業Astrobotic Technology社は、新型となる月面惑星探査機Peregrineを発表しました(ニュースリリース)。

 Astrobotic Technology社は、米国ピッツバーグに拠点を置く惑星探査にかかる宇宙ベンチャー企業で、惑星着陸機、ローバーなどを手がけています。日本の宇宙ベンチャー企業ispace率いるHAKUTOも参加する月面探査レースGoogle Lunar X Prizeにも参加するといいます。

 Astrobotic Technology社が開発したPeregrineは、35kgから265kgのペイロードを月面に運ぶことができ、また目標地点に100mの精度で着陸することができます。

 Peregrineは、Griffinという日本チームHAKUTOの月面ローバーを運ぶ予定となっているAstrobotic Technology社の月面着陸機と同型の小型機です。相違点は、Griffinが大型出力のスラスターを1機搭載しているのに対し、Peregrineは、5つの小型スラスターを有している点です。

 米国宇宙ベンチャー企業Astrobotic Technology社は、Airbus Defence and Space社およびDHL社とパートナーシップ契約を結んでいます。月面探査レースGoogle Lunar X Prize のためにAirbus Defence and Space社はエンジニアリングサポートを、DHLは惑星着陸機やローバーのコンポーネントや部品・部材などのロジスティクスをサポートします。

 近年、世界では、月を含め惑星探査宇宙ベンチャー企業の動きが活発です。2015年11月号でも紹介しましたが、米国での小惑星の所有権と採掘を認める宇宙法の成立に関するニュースやルクセンブルグ政府の宇宙資源探査に関する法整備に関するニュースが、世界各国の惑星探査宇宙ベンチャーを後押ししているようです。

 その他にも米国宇宙ベンチャー企業のMoon Express社は月への商用飛行の実現を目指すため2016年4月に米連邦航空局FAAに認可を申請し、早ければ2016年6月、7月にも決定が出る見通しのようです。これは月面の商用飛行を目指す民間企業にとって初の快挙です。Moon Express社も、月面探査レースGoogle Lunar X Prizeの賞金約27億円の獲得も目指しています。

米国宇宙ベンチャー企業Astrobotic Technology社の「Peregrine lunar lander」
米国宇宙ベンチャー企業Astrobotic Technology社の「Peregrine lunar lander」
(出所:同社Webサイトより)