2017年5月(2017年5月1日~2017年5月31日)の宇宙ビジネス通信をお届けします。今月は、New Spaceに関するニュースが数多く配信されました。以下の5つをピックアップして解説します。

【1位】小型ロケットビジネス市場の幕開け、Rocket Lab社がElectronロケットの初打ち上げに成功

米国Rocket Lab社のElectronロケットの打ち上げ
米国Rocket Lab社のElectronロケットの打ち上げ
(出所:Rocket lab社HP)
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 2017年5月25日、米Rocket Lab社は、ニュージーランドのMahia半島のLaunch Complex1という射場からElectronロケットの初めてとなるテスト打ち上げに成功しました(Rocket Lab社のホームページ)。

 本コラムの2017年2月号でも紹介しましたが、Electronロケットは全長17m、直径1.2mの2段ロケットです。太陽同期軌道の高度500kmであれば150kgのペイロードまで輸送することができるといいます。構体は、軽量化と高強度化のために炭素複合材で作られています。1段目、2段目のエンジンはRutherfordと言われ、主要な部分は3Dプリンターで作られています。燃料は液体酸素とケロシンを使用しています。

 今回の打ち上げテストの目的は、基本的な機能試験と考えられます。1段エンジンの燃焼、1段目の切り離し、2段エンジンの点火、燃焼、フェアリングの分離のテストは順調に終了したといいます。しかし、目標となる軌道高度には達することはできなかったようです。これから数週間かけ、打ち上げ時に取得した2万5000のデータを分析し、今後のElectronロケットの最適化に努めるといいます。

 ちなみに、米国連邦航空局(FAA)のサイトによると、今回の打ち上げにおいてElectronロケットには、“Humanity Star”というペイロードが搭載されていたようです(FAAのホームページ)。

 すでに、米国Rocket Lab社は、NASA、Spire社、Planet社、Moon Express社、Spaceflight社から契約を勝ち取り、今後ロンチサービスを提供する予定であることを発表しています。

 従来、小型衛星は、大型ロケットで同時に複数機が打ち上げられてきました。商用目的よりも技術開発目的による小型衛星が多く、各国の宇宙機関は低価格で打ち上げを支援していました。しかし今後の小型衛星は、小型ロケットによる打ち上げが主流となるでしょう。その理由は、大型ロケットでは、打ち上げに関するすべての事項(打ち上げ時期、打ち上げ時刻)が同時に打ち上げる大型衛星の都合で決定されるからです。例えば大型衛星の軌道投入が優先となり、小型衛星の所望の軌道導入の優先順位は劣後となってしまいます。

 米国Rocket Lab社は、小型ロケットビジネスにおけるリーダーとなり、この市場を牽引していくでしょう。