2015年12月の宇宙ビジネス通信をお届けします。12月は、世界各国から多くのニュースが報じられました。今月は、以下の5本をピックアップしました。

1位:「Space Xもロケット垂直着陸に成功」

 12月22日、Elon Musk氏率いる米国Space X社は、「Falcon 9ロケット」の打ち上げ後、第1段の垂直着陸に成功しました(ニュースリリース)。これは、11月23日にJeff Bezos氏率いる米国Blue Origin社が世界で初めて成功したロケットの垂直着陸に次ぐ快挙となります。

 この打ち上げでは、米国Orbcomm社の11機の小型衛星「Orbcomm OG2」の軌道投入も成功しています。

 このニュースのポイントは2つあります。まず、Elon Musk氏の経営者としての意思決定力の高さを示したこと、さらに、ロケットの垂直着陸成功という難易度の高い技術と打ち上げコスト費用の削減策の確立です。

 6月28日の宇宙ステーション補給機を搭載したFalcon 9ロケットの打ち上げ失敗、さらに11月23日のBlue Origin社のロケット垂直着陸成功を受け、Space X社のブランドは崩壊寸前でした。この失敗の許されない局面でのOrbcomm OG2の打ち上げとロケット第1段の垂直着陸の2つの成功によって、Space X社の名を再び世界に轟かせました。

 Space X社のFalcon 9は、世界で最もコスト競争力のあるロケットです。他社の同規模のロケットの打ち上げ費用100億円程度に比べ、Space X社は50億円から60億円で済むと言われています。この垂直着陸の成功により、打ち上げ費用は従来の1/2から1/3の25億円程度になると言われています。1/100になるのではないかという報道もあるほどです。なお、この垂直着陸による第1段の再利用の回数は、最高で10回程度ではないかといわれています。

 ロケットの打ち上げのコスト削減にかかる競争は激化しています。Space X社やBlue Origin社のようなベンチャー企業が世界のロケットに多大な影響力をもたらす新時代が到来したといえます。注目すべき点は、宇宙産業に新しい技術に関する“イノベーション”が起きていることです。経済学者のJoseph Schumpeter(ヨーゼフ・シュンペーター)は、新しい“イノベーション”を起こすには、起業家(アントレプレナー)が必要であり、資金調達も重要であると説いています。

 日本が計画している次世代ロケットH3の開発コンセプト、開発計画などに影響を与えるかもしれません。

Space X社 Falcon 9の第1段の垂直着陸の様子