この辺で、これまでの「本質ベースの経営」についての話をより深く分かっていただく狙いも込めて、しばし「経営」から離れて、「本質」をさらに掘り下げてみたい。もう分かったから本質の話はいい、という方にもお付き合い願えればと思う。本質の世界は、まだまだ深いのだ。

自然科学は本質に準じる学問である

 少々おさらいをしておこう。

 これまで本連載の中で何度も述べてきたように、本質とは、事物から偶有性(個別の事物がたまたま持つ属性)を全て捨象する(捨てる)ことで求められる、事物の普遍的な特徴である。また、「○○とは何か」という問いに対する答え(=××という普遍的な特徴を持つもの)、すなわち「万物における事物の定義」でもある。

 だから、一般的にそうと意識されていないが、自然科学において特定される自然の事物の普遍的な特徴は、本質である。同様に、普遍的な特徴を用いて行われる自然の事物の定義も、その事物の本質である。

 そして、自然科学における本質とそれに準じる考えがそうであるように、「考え」が論理的に導出されるものであることを前提として、事物の本質とそれに準じる考えは、普遍的に(常に)事物に当てはまるという意味で、正しい。対して、自然科学における偶有性とそれに準じる考えがそうであるように、事物の偶有性とそれに準じる考えは、偶有的に(たまたま)事物に当てはまるという意味で、正しいとは限らない。