前回見たように、世の中は、「正しさ」には「真」だけでなく「価値」があることに十分に気付いていない。これは「正しさ」とは何かをよく分かっていないということだ。しかし、人は、それが「価値」であることに気付かぬまま、「価値」である「正しさ」を多く語る。

 では、「正しさ」よりも語られることの多い「良さ」は、どうだろう。人は、常に何かを「良い」の「悪い」のと言っている。

「良さ」とは「価値」である

 我々は、事物が「プラスの感情」を引き起こす作用を持つとき、その事物は「良い」、すなわち、その事物は「良さ」を持つと言う。事物が「マイナスの感情」を引き起こす作用を持つとき、その事物は「悪い」、すなわち、その事物は「悪さ」を持つと言う。また、これまで述べてきたように、「価値」とは、事物が持つ直接的・間接的に感情を生む作用である。ならば、「良さ」とは「プラスの価値」であり、「悪さ」とは「マイナスの価値」ということになる。

 ただし、一般的には、「プラスの価値」は「価値」と呼ばれても、「マイナスの価値」は「価値」と呼ばれない。このことに従えば、「良さ」とは「価値」であり、「良い」事物には「価値」がある。「より良い」事物には「より大きな価値」がある。

 ところが、他方で、世の中では「価値」ではないものが「良さ」と呼ばれることも少なくない。世の中は、「良さ」とは何かをよく分かっていないのだ。