前回紹介しましたように、バドミントンのシャトルコック(シャトル)は天然素材の水鳥の羽をコルクに付けたものがベストといわれてきました。しかし、時代の流れとともに人工素材のシャトルが求められるようになりました。そこで、ミズノにより開発された人工素材のシャトルについて説明いたします。

 シャトルの評価軸は、飛翔性・耐久性・打球感・価格の4つです。全ての面で天然素材のものは、人工素材に優ります。価格面では、天然素材のものは高い場合で1ダース(12個)入りで5000円を超えますが、安い場合だと1000円くらいのものがあります。それに対して、人工素材のものは半ダース(6個)入りで1000円から1700円台です。つまり天然ものもグレードが低ければ人工ものより廉価ですし、天然ものの高級品も値が張るように見えて、それほどの割高感はないそうです。なぜなら、天然ものは少し壊れてもノック練習ぐらいには使用できますが、人工ものは壊れたら完全に使えなくなるからです。

 バドミントンでのシャトルの消耗度は高く、多い場合は1試合当たり1ダース以上のシャトルが必要なこともあります。試合中のシャトル交換は、ルールで何セット目と決まっているテニスなどと違い申告制で、プレーヤーは何度申告してもよいルールになっています。強い選手だと1回のショットで、コルクに挿してある羽の軸が折れる場合もあるそうです。

 飛翔性においても、天然ものは優れています。飛行方向の軸周りで回転しながら飛ぶため、軌道が安定するのです。ところが人工素材の羽はうまく回転するように造るのが難しく、不安定でブレながら飛ぶので、月とスッポンほどの違いがあるそうです。そして天然シャトルは、初速から手元に来る間にすっと減速しますが、人工ものはあまり速度が落ちないので、ラリーも続かなくなってしまうのです。

 打球感も異なります。シャトルは軽く造っておく必要があるため、樹脂製では強く打つとその瞬間に、一瞬ですがぺちゃんこに変形します。コントロールしにくくなる上、音がしないので打球感が全くない。ネットまわりの細かいショットは、変に回ってしまってシャトルが下を向いてくれず、打ちにくくなるのです。

* 前回同様、鳥の翼の構成要素のハネを「羽」、ハネツキのハネやバドミントン・シャトルコックを「羽根」と書きます。