全天候型サーフェスの改良に日本乗り出す

 「タータン」(米3M社)を初めとして、世界的に普及し、多くの選手が新記録を打ち立て、長所ばかりがクローズアップされていた全天候トラックにも、時が経つにつれて、いろいろな問題点が浮上してきました。中でも致命的だったのは、全天候トラックで練習する選手の足や膝に障害が出てきたことです。その数は少なくなかったので、海外のある名コーチをして「自分が教える選手には主として土のトラックや自然道を走らせ、全天候トラックは記録を取る時にだけ走らせるように注意を払っている」と言わしめたほどです。

 アスリートにとって高い危険性をはらんでいるトラックの状況を危惧し、日本ではきめ細かい研究や改良が始まり、その努力は現在も続いています。当時、筑波大学小林研究室や、東京工業大学小野研究室を筆頭に各所からアスリートの安全性確保を目指した研究論文が発表され、スポーツ力学という新たな研究分野誕生のきっかけになりました。多くの研究成果が生まれ、全天候トラックの構造や材質に取り入れられることにより、記録と安全性の向上に貢献しています。

 アスリートの安全に望ましい緩衝特性を得られる工夫がいかになされてきたのか、その改良の軌跡を以下に紹介します。

 全天候トラック舗装には、タータンからスタートしたウレタン系舗装材と、別のアプローチで開発されたゴムチップウレタン系舗装材、さらに合成ゴム敷物系舗装材の3種類があります(テニスコートにはこの他、アクリル系とアスファルト系があります)。