ワールドテック講師 元デンソー 愛知工業大学工学部機械学科非常勤講師 皆川一二氏
ワールドテック講師 元デンソー 愛知工業大学工学部機械学科非常勤講師 皆川一二氏
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 「DRBFM(Design Review Based on Failure Mode)」は、トヨタグループが活用している品質不具合の未然防止手法。トヨタグループと取り引きする際には「必須」のツールとも言われている。だが、DRBFMの真の強みは「抜けなく、しっかりと品質不具合が起きないように議論する仕組みにある」と、デンソーの開発設計者出身で「品質リーダー」も経験した皆川一二氏は言う。「技術者塾」において「品質トラブルを未然に防ぐ切り札 トヨタが推奨するDRBFM」の講座を持つ皆川氏に、DRBFMの特徴を聞いた。(聞き手は近岡 裕)

──まずは基本的な質問から。DRBFMとは何かについて分かりやすく教えてください。

皆川氏:トヨタ自動車、およびトヨタグループが活用している品質不具合未然防止手法です。設計の「変更点」や、製品が使われる環境や仕向地などの「変化点」に着目することで、品質トラブルの発生を防ぐ手法です。

 よく、「効率良く行うFMEA(Failure Mode and Effects Analysis:故障モード影響解析)」などと説明されますが、違います。確かに、変更点と変化点に絞り込んで効率化することはできますが、それ以上に大切なポイントがあります。それは、「なぜ、そのような設計をしたのかについて、みんなで徹底して議論すること」です。

 DRBFMは「Design Review Based on Failure Mode」の頭文字を取ったもの。日本語に訳せば「故障モードを基にした設計審査」となります。そう、読んで字のごとく、大切なのはデザインレビュー(DR)、すなわち「設計審査」の方なのです。

──DRBFMでは設計審査が重要ということですね?

皆川氏:設計審査の方に重きを置くというのはその通りなのですが、ここでも誤解している企業が少なくありません。DRは確かに「設計審査」と訳されますが、本当にすべきことは「みんなで議論すること」です。ところが、「審査」と訳されてしまったために、設計に対する審査会になっていることが非常に多い。例えば、デンソーであれば設計を終えた後に「品質保証会議」という次のステップに移行するための審査会があります。こうした次の工程に進めるか否かの審査会とDRを一緒に実施してしまう企業がとても多いのです。