ワールドテック講師 元デンソー 愛知工業大学工学部機械学科非常勤講師 皆川一二氏
ワールドテック講師 元デンソー 愛知工業大学工学部機械学科非常勤講師 皆川一二氏
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 大手企業の中でも優秀だと評価される技術者が習得している品質手法を網羅し、高い水準の「品質力」を身に付ける──。こうしたコンセプトで「技術者塾」が立ち上げた連続講座「品質完璧マスターシリーズ」。デンソーの開発設計者出身で「品質リーダー」も経験した皆川一二氏が講師を務める。その中に「最適品質を最高効率で得るトヨタのツール『多変量解析』」(2018年8月29日)という講座がある。トヨタグループにとって多変量解析は最適品質を最高効率で得るための道具だという。多変量解析について皆川氏に詳しく聞いた。(聞き手は近岡 裕)

──好評の「品質完璧マスターシリーズ」。第8回の講座のテーマは「多変量解析」です。大学で学ぶ応用数学的なイメージもあり、どうも難しく感じます。多変量解析とは何なのか、できる限りシンプルに教えてください。

皆川氏:多変量解析は、大量にあるデータを「見える化」して「意味」を見つけ出すための道具です。データは本来「宝」。山積みのデータに埋もれているダイヤの原石を見つけ出して磨き上げる。これが多変量解析を使いこなすイメージです。測定したデータは現場にたくさんあるのに、使い切れていない日本企業が多い。実にもったいないと思います。

 多変量解析を使うことで見いだせる意味には2種類があります。1つは「要約」、もう1つは「予測」です。

 要約とは、データにどのような特徴があるかを読み取ることです。データから何が言えるのかを見つけ出すのです。身近な例えを出すと、中・高校生のテストの成績。英語、数学、国語、理科、社会の点数に多変量解析を使うと、「数学の得意な人は理科もできる」「英語の点が高い人は国語も得意」などといった相関関係や傾向を見いだすことができるのです。

 製造業の分野で言えば、例えば、材料の組成比率と強度の関係を見いだすために多変量解析が使えます。元素であるリンとマンガンはどのように関係しているのか、ケイ素はどのように強度に効いているのか、といったことが分かるのです。