──多変量解析の重要性や利点は分かりました。でも、やっぱりとっつきにくいイメージは否めません。使いこなすには難易度が高そうです。だからこそ、あまり日本企業に浸透していないのではありませんか?

皆川氏:初めて見たり聞いたりしたときには難しい印象があるかもしれません。しかし、実際にはそんなことはありません。

 確かに、多変量解析には難解な数式が出てきます。重回帰式や判別式、主成分分析、クラスター分析などなど。多変量解析をこうした数式を使って理論を中心に学ぶと挫折しがちです。計算も手計算で大変なのです。

 実は、かつてトヨタグループもそうでした。理論的な説明が中心の多変量解析の研修を行っていたところ、難しくて、技術者といえども実務で使いこなせなかった。研修の講座として学んでおしまいで、実践には至らない。それでは多変量解析を学ぶ意味はありません。

 そこで、トヨタグループはこう考えました。「理論は後回しでいい。現場で使えるかどうかという視点に立とう」と。こうして理論を学んだ上で手計算する方法をやめ、計算を自動化できるソフトウエアを使うことにしました。加えて、実践形式の研修を始めました。講義に加えて、職場から持ち寄った課題をテーマにグループワークを行う方法を取り入れたのです。すると、現場での多変量解析の活用率が飛躍的に伸びました。

 「技術者塾」の講座も同様の手法で進めます。使うのは、統計的品質管理(SQC)解析ソフトウエア「JUSE-StatWorks」。とても簡単に解析できます。こんなイメージです。まず、Excelにデータを入力する。例えば、中古マンションの広さ、築年数、価格といったデータを入れる。次に、そのExcelデータをソフトウエアに貼り付ける(取り込む)。続いて、「多変量解析」ボタンを選択し、「重回帰分析」ボタンを選ぶ。すると、「回帰式」が出てくる。ここで「予測」ボタンを選択し、目を付けた中古マンションの広さと築年数のデータを入れると推定価格がはじき出される──。簡単でしょう?

 トヨタグループでは現場で使いやすくするために、小難しい理論と煩わしい計算から技術者を解放した。その途端に現場で使う機会が増えた。理論と計算はパソコンとソフトウエアに任せ、技術者としては多変量解析という道具を使いこなすことに重点を置けばよい、という考えで進めるのが本講座です。便利で強力な多変量解析という道具を使いこなしましょう。