──では、そのトヨタグループが日常的に使う多変量解析は、日本企業全体ではどれくらい浸透しているのでしょうか。

皆川氏:率直に言って、多変量解析を使いこなしている企業は少ないと思います。実は多変量解析に限らず、品質に関する教育を社内で全くしていないという企業もあります。大手企業でも珍しくはありません。

──なぜ少ないのでしょうか?

皆川氏:品質教育をあまり行っていないため、多変量解析の重要性や利点を知らないというケースが多いのではないでしょうか。いや、それ以前に、多変量解析を知らなくても何とか製品を造れているからでしょうね。

 確かに、多変量解析を使わなくても日々の製品は出来ます。しかし、多変量解析を使わないままで済ませているということは、いわば、良品が「たまたま出来た」状態。良品が出来ている間はよいでしょう。でも、ある時突然、不良が出てトラブルになったら解決できないか、解決したように思えても、それもまた偶然ということになりかねません。対症療法に過ぎないかもしれないのです。

 つまり、それは現場の勘とコツに頼っているということ。誰かが試行錯誤して製品の設計や生産がたまたま出来た。そして、それを使い続けている。でも、それでは「なぜできたのか?」と質問されたときに根拠を答えることができません。