ワールドテック講師 元デンソー 愛知工業大学工学部機械学科非常勤講師 皆川一二氏
ワールドテック講師 元デンソー 愛知工業大学工学部機械学科非常勤講師 皆川一二氏
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 大手企業の中でも優秀だと評価される技術者が習得している品質手法を網羅し、高い水準の「品質力」を身に付ける──。こうしたコンセプトで「技術者塾」が立ち上げた連続講座「品質完璧マスターシリーズ」。デンソーの開発設計者出身で「品質リーダー」も経験した皆川一二氏が講師を務める。その中に「トヨタの製品開発力の源泉『品質機能展開(QFD)』」という講座がある。「品質機能展開」は、トヨタグループにおいて製品開発の際に必要不可欠のツール。使わなければ、製品開発の企画は通らない。トヨタグループは品質機能展開をどのように使いこなすのか。皆川氏に聞いた。(聞き手は近岡 裕)

──おかげさまで高評価をいただいている「品質完璧マスターシリーズ」。第6回の講座のテーマは「品質機能展開(QFD)」です。品質機能展開については聞き慣れない人もいると思います。品質機能展開とは何でしょうか。

皆川氏:お客様の視点に立ってください。お客様は何を買うのでしょうか。お客様は物を買いません。「機能」を買うのです。この機能を間違えると、いくら一生懸命に造っても製品は売れません。

 極端な例を出しましょう。辞書の機能は何でしょうか。多くの人は「言葉を調べること」だと答えると思います。それなら「電子辞書」でも構いませんよね? しかし、それでは満足しない人がいます。というのは、「本棚に飾ること」という機能を求める人がいるからです。知的なステータスを示すために、重厚で高級感や知的な感じのする外装をまとった紙の辞書を必要とするお客様もいるのです。冗談のような話ですが、ここで言いたいことは、機能を間違えて開発設計してしまうと全く売れない製品となってしまう、ということです。

 品質機能展開は、製品開発の際に、どのような機能が必要で、その機能を発揮するためにどのような特性が必要かについて決めるためのツールです。機能(要求品質展開表)を横(行)に、特性(品質特性展開表)を縦(列)に配置したマトリックス(品質表)を作成し、どこを重点的に開発すべきかを決定するために使います。

 もっとシンプルに言えばこうです。開発設計者が次の製品を開発する際に、頭に漠然と製品のイメージを思い描いているだけでは、具体的な設計に移行することができません。頭の中で考えている「次の製品はこんな感じがいいなあ」というイメージを、具体的にどのような機能にし、そしてその機能を満足する特性をどのようにするかを「見える化」する。そのために使うのが品質機能展開です。