──トヨタグループでは、品質機能展開をどの段階で使うのでしょうか。

皆川氏:トヨタグループにおける新製品開発の手順はこうです。まず、「対象商品企画」があります。ここで、どのような製品を開発するのかについて、その方向性を決めます。そのためにアイデア出しから入り、新製品のアイデア書をまとめます。

 次に、「市場調査」に進みます。ここでは市場動向を調べ、納入先の動向や他社動向も調べます。そして、これらをベースに「商品企画」を行います。ここでコンセプトを固めます。

 続いて「製品企画」に移行し、具体的にどのような機能と特性の製品にしていくかを決めます。ここで活用するのが、品質機能展開です。先述の通り、品質機能展開は製品企画を提示した際の「根拠」として不可欠のものです。例えば、静かなフューエルポンプを開発するという企画であれば、脈動の幅を具体的に「何kPaに抑える」と言ったときの数値の根拠や、なぜ脈動幅を重視したかという根拠が必要です。品質機能展開を使わないと、技術者が選んだ機能や特性に対して、経営陣などにそれらを選んだ説得力を持った根拠を示すことできません。そうなれば当然、製品企画は通りません。

 トヨタグループが品質機能展開を重視するのは、開発の方向や重視する特性の優先順位を、思いつきではなく論理的に決めて製品開発を進めるためです。いわゆる「当たるも八卦、当たらぬも八卦」では、ヒットすることもあるかもしれませんが、外す場合の方が多い。実際、機能も特性も抜けだらけになることでしょう。