──トヨタグループでは品質機能展開をどのように捉えているのでしょうか。

皆川氏:製品開発における必須のツールです。例えば、デンソーでは完成度評価(やるべきことをきちんとやっているかどうか)を確かめる審議会があり、品質機能展開を行っていなければその審議会を通りません。

 これは、プロセスを大切にするからです。先ほど「品質機能展開を使わなくても製品を造ることはできる」と言いました。でも、それでは「結果オーライ」。デンソーではそうではなく、「きちんとしたプロセスを経ているから、良い結果が生まれる」と考えます。プロセスがあって、はじめて結果が付いてくるのです。

 品質機能展開を使えば、なぜその機能の特性値に着目したか、なぜそれを重要特性として選んだかをロジカルに説明できる。完成度評価の審議会にも自信を持って臨めるのです。デンソー時代はこれが当たり前でした。しかし、その後、デンソーから外に出て品質機能展開を使っている企業が少ないことを知りました。そのときの正直な感想を言わせてもらえば、「よく使わずに済ませているな。なぜ、それを許しているのだろう?」というものです。

 トヨタグループが品質機能展開を使うときのポイントは、機能として何があるかを抜け落とさずに見つけ出すことです。品質機能展開は機能をベースに特性を考えるため、機能が抜けてしまうと特性も出せず、製品開発が進まなくなってしまうからです。従って、1人で機能を見つけ出すことはしません。例えば、デンソーでは5者(設計、製造、生産技術、品質保証、検査)がそろって品質機能展開を実施します。